ビーバー/ロザリオのソナタ
(Gunar Letzbor Ars Antiqua Austria 2019録音)



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24年ぶりの再録音!


17世紀に作曲されたヴァイオリン音楽の最高峰と言っても過言ではないであろう

 ハインリヒ・イグナツ・フランツ・フォン・ビーバー(1644〜1704)のロザリオのソナタ(1676)

1曲ごとに異なるスコルダトゥーラが要求される難曲にもかかわらず、たくさんのバロック・ヴァイオリニストが録音している人気曲。

 なかでも代表的名盤と言われているのがGunar Letzborの1996年録音

熱いパッションみなぎる没入型の激しい演奏で、私もずっと愛聴してきましたが、なんとなんと、24年ぶりに Letzborがこの曲を再録音したという情報が!
「これは買わなきゃ!」と思ったのですが、「ロザリオのソナタ」、私のCD棚にすでに10種類も並んでるじゃありませんか、ひええ〜。


  もちろん迷わず買いました(←え)。

  11種類目だぜ、文句あるか!(←誰に言ってる?)

編成は前回と同じく、ヴァイオリン+ヴィオール+オルガン+テオルボが基本。
Letzborは、「この曲は教会で演奏することを想定していたはずなので通奏低音にはオルガンを使うべきだ」と述べており、チェンバロは使っていません。
びっくりするのが収録時間で、旧録音が120分36秒だったのに対し142分35秒と、20分以上も長くなっています
これはソナタ間の無音部が十数秒〜二十秒とえらく長くなっているのも一因。
「あれ、CD終わったのかな?」と思って取り出しそうになること数回でした、お気を付け下さい(旧盤は5〜6秒)。

もちろん演奏自体も長いですが、間延びするどころかさらにテンションアップしてヤバイことになっています。


ソナタ第7番「キリストの鞭打ち」より
新録音は旧録音より2分長いうえに、表現が熱くて濃いです。
鞭打ちの痛さが二割増しくらいになっています。

新録音


ソナタ第4番「主イエスの聖殿への拝謁(シャコンヌ)」
この曲は演奏時間はそれほど変わりませんが、中盤でつま弾かれるテオルボは旧盤とは違ったアレンジ。
終盤の盛り上がり方は新録音のほうが明らかに激しいというか荒々しいです、ほぼロックです (ちょっと音程が怪しいところもありますがパッションを取ったのでしょう)。

新録音


そしてなんといっても最後のパッサカリア
旧録音が約9分なのに対し、新録音はなんと13分。
旧録音の堅固な構成感も見事ですが、新録音はたっぷりとタメを効かせた瞑想的で深遠な演奏。
でもタメすぎて途中で止まりそうなところがあるのは、「ちょっとやりすぎ?」と思わなくもありません。
とくにラスト、1分近い無音部があってからおもむろに最後の和音をつぶやくように置いて終わるのは、こりゃいったいなんですか。
集中して聴いていると気が遠くなってきます。

ソナタ第16番 パッサカリア「守護天使」

新録音



休日にじっくり聴き比べていると、時間のたつのを忘れます。
この新盤、素晴らしいですが、はじめて「ロザリオのソナタ」を聴く人にはちょっとどうかな・・・?

はじめて聴かれるのなら、素直で中庸なラウテンバッハーポッジャーがオススメです。
「素直で中庸な演奏なんて、モノ足りんぞ!」という方なら、Letzborの旧盤から聴かれるのもいいかもしれません。

(2020.05.06.)


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