ショパン/練習曲集、シューマン/交響的練習曲:ヴァレンティーナ・リシッツァ
Valentina Lisitsa/Etudes
(2014)




Amazon.co.jp : Valentina Lisitsa/Etudes

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録音風景


ショパンの練習曲集のアルバムでは、いまだにマウリツィオ・ポリーニ盤(1972録音)が、王座に君臨していると思います。
30歳のポリーニによる音の大伽藍、アポロンしろしめす輝く大聖堂のような華麗かつ完璧なパフォーマンス。
アポロンいやポリーニの横顔に後光がさしているようなジャケットを何度伏し拝んだことでしょう、ありがたやありがたや。

        
     Amazon.co.jp : ショパン:12の練習曲 作品10/作品25

これを聴いちゃうと、ほかのどの演奏も物足りなくて・・・。
例外はサンソン・フランソワの1958年録音。
これは調子いい時のフランソワに悪魔が乗り移って弾かせたかのようなデモーニッシュかつ個性的な演奏。
色っぽい音の粒立ち、猫の目のように変わる音色、危ういまでの奔放さ (ただし録音は良くない)。
いわば「神」ポリーニ「悪魔」フランソワ、考え抜かれたポリーニと気まぐれ天才フランソワ、
このふたつがあれば、ほかにはなんにもいらんかったわけですよ。
(アルゲリッチ録音しなかったしなー)

       
    Amazon.co.jp : ショパン:27の練習曲


ところが21世紀の剛腕バカテクピアニスト、ヴァレンティーナ・リシッツァがついにショパンの練習曲を録音したではありませんか!
リシッツァ姐さんは2004年にすでにこの曲のDVDを製作、現在廃盤ながら自らYou Tubeにアップしてます。

 ショパン:練習曲作品10−4
 

 ショパン:練習曲作品25−12
 

素晴らしい演奏&美しい映像ですが、リシッツァ自身は満足していなかったらしく、今回満を持してこのCDを録音しました。
おまけにシューマンの「交響的練習曲」まで入れちゃうサービスぶりで、収録時間は85分!

印象に残るのが曲と曲の間の空白がほとんどないこと。
前の曲の最後の音が消えた瞬間に次の曲が始まるような感じで、リシッツァは「練習曲集」全体を一つの曲としてとらえているのかな。
それにしても完璧なテクニックを武器に、ショパンの楽譜と自由自在に戯れるリシッツァは圧巻。
作品10-4、10-12などの激しい曲では、するどく粒だった音の群れが駆け抜けていくなかで、テンポの揺らぎ、強弱のメリハリをしっかりつけてます。
そういった表情付けはあらかじめきちんと計算してあるのでしょうけど、
実際にはそんな計算かなぐり捨てて即興的かつエモーショナルに弾いてるように聴こえます。
大きめの音量で再生すると巨大な音の奔流に問答無用で押し流される快感を味わえます。


併録のシューマン「交響的練習曲」は、これまた私的にはポリーニの録音 で親しんだ曲。
ともに完璧な技巧でこの難曲を弾きこなしていますが、ポリーニの周到かつ構築的な演奏に対し、リシッツァは即興的で感覚的で自由自在。
これまた超カッチョイイ演奏です。

筋肉質でありながら色気も充分、現代的センスたっぷりの颯爽と引き締まったショパン&シューマンです。

(2015.8.2.)

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