矢代秋雄/ピアノ協奏曲&交響曲
湯浅卓雄指揮、岡田博美独奏、アルスター交響楽団
(NAXOS 8.555351J)



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Tower@jp : 矢代秋雄: ピアノ協奏曲, 交響曲


日本人の手になるピアノ協奏曲の最高傑作(と私は信じている)
矢代秋雄「ピアノ協奏曲」が、ナクソス・レーベルから発売されました。
カップリングは、これまた傑作である「交響曲」

「ピアノ協奏曲」(1967)に関しては、以前別記事で長々と書きましたので (→ こちらです
ここでは繰り返しませんが、ホントにいい曲ですよ〜。
西欧のクラシックの古典的な手法を完全にわがものにした上で、日本人にしか書けない音楽を作ってます。

矢代秋雄別宮貞雄黛敏郎とともに1950年代にパリ国立音楽院に留学しました。
黛は音楽院の保守的な講義内容に失望し1年で帰国しましたが、矢代はきっちり5年間学びました。
当時やはりパリに留学していた批評家の遠山一行は、嬉々としてフーガや和声の話ばかりする矢代に、

 「若い作曲家がこんなに保守的で大丈夫なのだろうか」
 
と危惧の念すら抱いたと言います。
いかにも矢代秋雄らしいエピソードです。

さてこのCD、演奏もグッドです。
「ピアノ協奏曲」初演者・中村紘子の録音は(複数あります)どれも熱気にあふれた「濃い」演奏ですが、この演奏はスマートにスタイリッシュにまとめています。
岡田博美の独奏は力のこもった熱演、テクニックの切れ味も鋭いです。
ただ、バックをつとめるアルスター交響楽団はちょっとあっさりしすぎかも。
第2楽章の弦など、もっと日本的情念のこもった粘っこいフレージングが好みですが、これはこれでニュートラルな解釈によるスタンダードな演奏と言えます。

 矢代秋雄:ピアノ協奏曲
 


カップリングの「交響曲」(1958)は、緩・急・緩・急の4楽章からなる30分あまりの作品。
古典的で端整な音楽です。

第1楽章は幻想的なプレリュード。 きちんとした形式はなく、静謐なアダージョと動的なモデラートが交互に現れます。
この楽章で提示されるいくつかの動機は、あとの楽章で姿を変えて登場します。

 

第2楽章はスケルツォ、最初に提示される独特のリズムが執拗に反復される、躍動感あふれる楽章。
1:49からの木琴の大活躍が楽しい。 

 

第3楽章は変奏曲ですが、各変奏は長さもまちまちではっきりした切れ目もありません。
まず、イングリッシュ・ホルンとバス・フルートが主題を提示。
1:34から管楽器主体による第一変奏、ビブラフォンの伴奏が幻想的で美しいです。
3:50から弦楽器が登場し第二変奏、キラキラとからむチェレスタが洒落ています。
5:48から金管楽器のコラール風な短い第三変奏。
6:26から低音弦で始まる第四変奏は、弦楽器と打楽器のゆっくりした掛け合いとなります。
この変奏は日本的情緒を盛り込みつつ延々と続き、クライマックスを形成し静まってゆきます。
11:21から結尾部、金管楽器のコラールに導かれてイングリッシュ・ホルンに主題が再現します。
第4変奏の打楽器によるリズム・パターンを回想しながら消えてゆきます。

 

第4楽章はソナタ形式のフィナーレ、これまでの楽章の素材を巧みに組み合わせて作られています。
コントラファゴットの唸りと、つんざくようなピッコロが交互に登場する長い序奏を経て、
3:42から主部・第一主題が提示されます。これは第1楽章の主題の変形です。
4:58からピッコロとコントラファゴットに出るのが第二主題ですが、第一主題との対比はあまり感じられませんね。
5:49から短い展開部、鐘の響きが印象的で、これまでの楽章の動機も織り交ぜられています。
6:55から圧縮された再現部、7:49から第1楽章の主題による荘重なコラールとなり、力強く全曲を締めくくります。

 

両曲とも一部の隙もなくがっちり構成された傑作です。
古典としてこれからも演奏され続けてほしいものです。

このCD、私のイチオシです。ぜひ御一聴を。

(02.3.16.記)

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