矢代秋雄/交響的作品&交響曲
(佐藤功太郎・指揮 東京都交響楽団 1992録音)



Tower : 矢代秋雄/交響的作品&交響曲


4月9日は、作曲家 矢代秋雄の命日(1929/9/10〜1976/4/9)。
私、矢代秋雄ファンのはしくれとして、これまでいろいろな曲をとりあげてきました。

 なのでおかげさまで、せっかくの命日に取り上げる曲がありません・・・だって寡作なんだもん。

と思ってたら、初期の傑作「交響的作品」があったじゃあーりましぇんかーマイケルシェンカー!
作曲者21歳、東京藝大専攻科時代の作品です。
大管弦楽のための単一楽章・32分の大曲で、自由なソナタ形式になっています。
「もう交響曲ってことでよくね?」と言いたくなりますが、作曲者の中では「このくらいではまだ交響曲とは名乗れんっ!」という思いがあったのでしょう(カッコイー)。
作曲の翌年(1951年3月)東京藝大管弦楽団による初演を終えた矢代秋雄は、さらなる研鑽を積むためパリ留学に旅立ちます(カッコイー)。



冒頭、ヴィオラがアダージョで提示する第一主題のしんみりした美しさ。そこはかとなく東洋的で、シルクロードの風景が脳裏に浮かびます。マーラーの9番もちょっと連想します。。
この主題は徐々に厚みを加えながら執拗に反復され(ボレロを意識?)、「もうええわ!」と言いたくなったころ(4:46)チャイコフスキーの交響曲第4番を思わせるファンファーレが鳴り響き、砂漠の戦の雰囲気に。
このファンファーレ主題は全曲を通して大活躍します。やがて第一主題が戻ってきます。
6:13、チェロに力強い第二主題が現れ、活発で戦闘的なフーガとなり展開されます。
8:56からオーボエにピウ・レントでおだやかな第三主題が出ます。しっとりゆったり、オリエンタルな夜の雰囲気、優美なテクスチュアを聴かせます。
11:46からこの主題が展開され、12:39新しい抒情的なメロディが登場(第四主題)、つづいて第一主題が短調で回帰、ファンファーレ主題も顔を出し、徐々に不穏な雰囲気になり、14:55から展開部になだれ込みます。
この部分は長大で、主題群はさまざまに組んずほぐれつ、荒れ狂ったり静まったり、執拗に展開されます。
若い作曲者が持てる技の限りを尽くしており、実に聴きごたえがあります。
24:54から第二主題の転回形によるフーガとなり、26:23からクライマックス、小太鼓のリズムをバックにファンファーレ主題が奏でられるところは、まるでショスタコーヴィチです!
27:40から再現部に相当する部分、ファンファーレ主題に何度もさえぎられつつ第一主題が再現します。
徐々に静まってゆき、29:35に第四主題、29:50からフルートに第三主題が再現、これらを静かに繰り返しながら、曲は遠くへ消えてゆきます。

21歳の若者の作品とは思えないほどの堂々たる交響作品であります。
そして矢代秋雄は5年間のパリ留学を終えて1956年帰国、1958年に満を侍して大傑作「交響曲」を送り出すのです!(カッコイー)

なお「交響曲」に関しては、こちらの記事をご参照ください →  矢代秋雄/ピアノ協奏曲&交響曲

(2020.04.09.)


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