矢代秋雄/チェロ協奏曲(1960)

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今年生誕90年の矢代秋雄(1929〜1976)の交響曲(1958)とピアノ協奏曲(1967)が好き好き大好き超愛してるなワタシ。

ただ、チェロ協奏曲(1960)はどうもいけません。
20分程度の短い協奏曲ですが、つかみどころがなく、陰気で暗くてなんだかよくわからない。
実演を聴いたこともありますが、眠らずに聴き通すだけで精いっぱいでした(あと5分長かったら危なかった)。
でも世間一般的には「傑作」ということになっているので、きちんと聴いてみないとなあと思っていたところ、
今年(2019年)、矢代秋雄「チェロ協奏曲」のポケットスコアが発売されたじゃあーりましぇんかーマイケルシェンカー!

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さっそくスコアを購入。
解説によるとこの曲は単一楽章で書かれているけれど4つの部分に分けることができ、冒頭に3分半に及ぶチェロのカデンツァがあります。
このカデンツァが主題提示部を兼ねていて、ここで提示された主題(というか動機、モチーフ)が様々に展開され、
最後に置かれた二つめのカデンツァが再現部を兼ねる、という一種のソナタ形式なのだそうです!

あいわかった、それでは聴いてみるぞよ。

 

第1部:カデンツァ
冒頭に登場する「レ ファ# ファ レ」がいわば「モチーフ1」、味もそっけもないけど、とにかく主要主題なのですコレ。
1:04の「ソ ラb〜レ レb ド」「モチーフ2」、緊張を高めてゆき、2:47速い上昇音型の後にせっぱつまったように登場する「シ シ シ シラ#〜」「モチーフ3」で、
以上がこの曲の「主要主題」(主題ねえ・・・)。

第2部となり3:21から管弦楽が登場、主題が展開されてゆきます。
まずティンパニが「モチーフ1」を出し、チェロが「モチーフ2」で答え、4:18にはホルンに「モチーフ3」がでて、フルートが「モチーフ1」で応答するって具合。
チェロは管弦楽を従えながら複雑なメロディを歌ってゆき、6:21から激しい上昇音型の繰り返しとなり、6:35で「モチーフ3」によるひとつのクライマックスを作ります。
管弦楽が「モチーフ1」の強奏で応え、チェロの短いカデンツァで曲は一段落。

第3部は7:50から、アルト・フルートが「モチーフ1」から始まるメロディを紡いでゆき、チェロはピチカートで合いの手を入れます。
このあたりは日本的情緒が漂い、邦楽というか文楽を思わせる雰囲気に。
9:40からはチェロが「モチーフ2」にもとづくメロディをしみじみと歌い、弦楽器群が風のそよぎのようにはかなげに支えます。
この部分の弦の和音の玄妙さがなんとも美しい。
11:36からふたたびアルト・フルートとチェロのピチカートの対話になります。
つまり第3部は「三部形式」なのです。

第4部は12:50から。急速なプレストであり、全曲のクライマックスです。
雷鳴のようなティンパニをバックに断片的な上昇音型があっちに現れこっちに顔を出しするイントロを経て、
13:18、独奏チェロに新しい主題が登場、作曲者によると「モチーフ1」の変形らしいのですが、このメロディなにげに十二音で構成されています。
チェロはギクシャクとした音型を連ねながら進んでゆきますが、14:08からオーボエやフルートに「モチーフ1」がはっきり登場します。
バックで控えめに鳴るチェレスタが幻想的。
チェロも「モチーフ1」を歌いますが、再びギクシャクしながらリズミックに展開してゆき、15:40、チェロに十二音主題がくっきり再現します。
続いてハープのグリッサンドをバックにチェロが「モチーフ3」を朗々と歌い、管弦楽の強奏でカデンツァになだれ込みます。
16:20からのカデンツァでは、冒頭に提示された3つのモチーフが変形されながら再現、途中からティンパニや独奏ヴァイオリンも参加、
最後はチェロによる「モチーフ3」のつぶやきで静かに終わります。


・・・何とかこの曲、理解できました!
スコアを見ながら聴くと、一部の隙もなくがっちり構成された曲であることがよくわかりました。

これで実演に接しても眠くならずに聴き通せそうです。

(2019.11.02.)


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