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1.ソナタ形式なんてこわくな

:まずは「ソナタ形式」からいきましょう、これぞクラシックの鉄則。

:ついに出たかっ、「ソナタ形式」!  く、くるならこいっ! こ、こ、こ、こわくなんかないぞっ!

:べつに、とって喰いやしないって。
   古典派〜ロマン派時代(18世紀半ば〜19世紀半ば)の交響曲やソナタの第1楽章は、たいていソナタ形式で書かれているの。
   そうした決まりは19世紀後半から徐々に崩壊していくけど、実は現代音楽にもソナタ形式をふまえて作られている曲はたくさんあるのよ。
   つまり「ソナタ形式」は18世紀中ごろに完成した形式なんだけど、その後200年以上、クラシックの基本形式であり続けているというわけ。

それでいったいどんな形式なのよ。

ソナタ形式は、大きく3つの部分に分かれます。

   提示部 → 展開部 → 再現部 よ。

:ふむふむ、それで?

:もう少し細かく言うと、

      提示部:主題を提示する第一主題→経過部→第二主題→小結尾部)
       ↓
      展開部:主題を展開する
       ↓
      再現部:主題を再現する第一主題→経過部→第二主題→結尾部)

   という形になるわね。主題はふたつあるのが基本なの。

:けっこうややこしいなあ・・・

:実際に聴いてみればそうでもないわよ。むしろあまりややこしくないから、200年ももったのかもしれない。

:うーん、十分ややこしいと思うけど・・・

:それはそれとして、細かい約束事が3つほどあるのよ。

  約束@ 第一主題と第二主題は違う調で提示すること。

    つまり経過部で転調しておけ、ということね。

:転調?

まあまあ、難しく考えないで。 とにかく第一主題と第二主題は調を変えるということ。

  約束A 提示部はもう一度繰り返す

    聴く人に主題をしっかり覚えてもらうためかな。 ただし、コンサートでは繰り返しを省略することも多いわね。
    また、そもそも楽譜に繰り返しの指示がない場合は繰り返さない。

  約束B 再現部では第一主題と第二主題は同じ調で出すこと。

    「提示部では両主題は対立し、再現部では融和する」とか言われるけど、深く考えずに、とにかくそういう「ルール」なんだと思えばいいわ。

ところで、ソナタ形式って誰が作ったの?

ソナタ形式は、ひとりの人が作ったわけじゃないわ。
   18世紀前半、作曲家たちが曲を作っていくなかで、「交響曲やソナタを書くときは、こんな形式を使うとすわりがいいぞ」
   と、自然発生的に出来上がっていったものなの。
   ちなみに、「ソナタ」という語は、イタリア語の「ソナーレ(響く)」から来ているといわれるわ。
   ソナタ形式が確立した時代を音楽史では「古典派時代」と呼ぶのよ。
   ハイドン、モーツァルト、ベートヴェンなどの大作曲家が活躍した時代ね。(ちなみに古典派の前は「バロック時代」と呼びます)

なるほどね。でも、話だけ聞いていても、やっぱりよくわかんない。

そうね、実例を聴いてみたいわね。
   モーツァルトの交響曲第40番ト短調K.550より第1楽章など、どうかしら。
   41番まであるモーツァルトの交響曲の中で、1,2を争う人気曲。
   ちょうど、モーツァルト(17561791)が生まれた頃に、ソナタ形式が完成したわけ。
   なお、この曲が書かれたのは1788年、モーツァルト33才の年ね。

   それでは、次のページへ行きましょう。→ 次のページ「モーツァルト/交響曲第40番・第1楽章」へ

(05.7月 記)




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