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  モーツァルト/交響曲第40番ト短調K.550より第1楽章

文中のタイミング表示は、このCDによっています。 快速でスリムな、現代的名演奏です。
   




Amazon.co.jp : モーツァルト:交響曲第40番、第41番「ジュピター」


モーツァルト:交響曲第40番・第1楽章


速さはアレグロ・モルト(非常に快速に)、提示部0:00から1:45までよ。
   まず、さざ波のような伴奏にのって、ヴァイオリンに第一主題が、ほら出た(譜例1)。



・・・・・

こらこら、寝るんじゃない。

い、いたたたた、耳ひっぱらないでっ!  しょうがないじゃない、反射的に眠っちゃうんだから・・・

う〜ん、これはかなり重症だわ。

「いいじゃない、寝ちゃえば」なんて言っといて、話が違うよ・・・ あら、このメロディ、どっかで聞いたことある。

あなたでも聞いたことあるのね。 有名なメロディだもんね。
   0:31から、ちょっと力の入ったメロディが登場。ここから経過部(譜例2)。



曲調一転、、威圧感のある響きだわー。

経過部は、言ってみれば自然に転調するためのつなぎなんだけど、
   それだけじゃ退屈だから、新しい主題を投入したりして、作曲家も工夫しているのよ。

う〜ん、寝ちゃ悪いかな、モーツァルトさんに。
 
おお、殊勝な心がけ。 0:47から第二主題ね。 第一主題がト短調だったのに対して、これは変ロ長調(譜例3)。



つまり「転調」してるわけね。

そう、「約束@ 第一主題と第二主題は違う調で提示する」よ。

長調といっても、なんだか寂しそうな雰囲気だわね。

1:19から小結尾部。第一主題が戻ってきて、1:47で提示部は終わり・・・と思ったらもう一度最初から繰り返し。

   「約束A 提示部はもう一度繰り返す」ね。

これは、単なる繰り返しなの?

うん、そうだよ。

・・・・・

寝るなーっ!! さっき「寝ちゃ悪い」なんて言っていた、鼻の先も乾かないうちにっ!

あたしは犬ですか。それを言うなら「舌の根も乾かないうちに」だよ。

そこんとこが昔から納得いかないのよねえ、乾燥するならまず舌の根じゃなくて舌の先からであるべきじゃないかしら?
   ていうか、そもそも舌の根ってどこよ?

すがすがしいまでにどうでもいい話ですな。

さて、提示部の繰り返しが終わって、展開部3:29から4:37まで。
   ヴァイオリンに第一主題が現われるけど、いきなり嬰ヘ短調というややこしい調に転調してます。不安定な感じね。
   展開部では、第一主題をつぎつぎと転調しながら展開するけど、結局、第二主題は姿を見せないのよ。

えー! そんなのって、ありなの?

うん、わりとよくあることよ。
   さて、4:10あたりから息をひそめるように静かになって、4:24、ちいさく盛り上がりを作ったと思うと、再び波が引くように静まってゆき
   フルートが第一主題の再現を用意、再現部へと流れこんでゆくのよ。

たしかに展開部はひたすら第一主題を繰り返していたような感じだわー。

ただ繰り返してたんじゃなくて、「展開」してたんだけどね・・・

   さて再現部4:38から最後まで。 まず、提示部とほぼ同じように第一主題が再現されます。
   ただしファゴットがからんでより哀愁味をかもしだしてるのはいちおう注目。
   5:05から経過部。ここでは経過部は前よりもかなり長くなっているの。
   展開部で第一主題以外に目もくれなかったことの埋合わせかもね。
   経過主題がしばらく展開されてから、5:41第二主題の再現。

あれ、提示部のときと感じが違う。

そうよ。第一主題と同じト短調になっているの。

なるほど、「約束B 再現部では第一主題と第二主題は同じ調で出す」か。

正解!
   曲は提示部のときと同じように進行してゆき、ひたすら第一主題を繰り返し・・・じゃなかった展開しながら、力強く曲を閉じるの。

・・・・・

だから寝るなーっ!!



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さて、もう1曲、ソナタ形式の曲を聴きましょうか。
   モーツァルトの死から約100年後の1893年に書かれた、
   ドヴォルザーク(18411904)の、弦楽四重奏曲第12番ヘ長調「アメリカ」・第1楽章 はいかが。

へいへい、わかりました、ふああ・・・・→ 次のページ「ドヴォルザーク/弦楽四重奏曲第12番『アメリカ』・第1楽章へ

(05.7.18. 記)




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