矢代秋雄/ピアノ作品集
赤井裕美(ピアノ)



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<曲目>
ピアノのためのソナチネ(1945)
24のプレリュード(1945)
夜曲(1947)
荒武者の踊り(1949)
ピアノ・ソナタ(1961)
プレスト(1960)
子供のための小品より(1963〜1972)
桐朋学園・ピアノ初見曲(3曲)(1976)

矢代秋雄(1929〜1976)に、CD1枚分ものピアノ独奏曲があったとは!
喜び勇んで買ってみました。

「ソナチネ」「24のプレリュード」は、15歳のときの作品。
なんという こまっしゃくれたガキ 早熟な天才でしょう!
「ソナチネ」の楽譜の扉には、
ラヴェルのソナチネに似ているかもしれないが、作曲当時はラヴェルの曲は知らなかったので決して模倣したわけではない、
というフランス語による断り書きがあるそうです。
なんという こまっしゃくれたガキ 教養あふれる秀才でしょう!
1945年の日本に、こんな少年が存在していたとは・・・。

 ソナチネ
 (このCDの演奏ではありません)

曲のほうも、15歳の少年の作品とは思えない完成度です。
「ソナチネ」第3楽章の日本的情緒にあふれたプレスト・スケルツァンドの印象的なこと。
「プレリュード第24番」の無窮動的トッカータは、ドビュッシーの作品といわれたなら、私なら信じます。

 24の前奏曲
 

優雅で夢見るような「夜曲」、伊福部昭かと思う「荒武者の踊り」をへて、名曲「ピアノ・ソナタ」へ。
矢代の作品中もっとも前衛的な曲で、聴けば聴くほどに味わいが深まりますが、1回や2回聴いたくらいではわかりません。
でも20回くらい続けて聴くと、頭が痛くなりました。
やや難解ですが良い曲なので、20回とは言いませんがためしに聴いていただきたいもの。

 ピアノ・ソナタ
 (このCDの演奏ではありません)

第1楽章・再現部のないソナタ形式。
まず、十二音による第一主題が提示されます。屹立する岩のようなダイナミックで厳しい音型です。
0:19からアダージョの第二主題部、半音進行する和音に乗って、0:34から柔和なメロディが歌われます。
1:02から両主題が短く繰り返され、1:49から展開部に相当する部分になります。
まず第一主題が激しく展開され、2:05からは第二主題が展開されます。 夢見るような美しい和音の連続に魅了されます。
最後に3:17から第一主題がとつとつとはかなげに回想され、静かに楽章を閉じます。

第2楽章トッカータ 3:52から
カンディンスキーの絵のように音が跳ね回ります。
トッカータ主題は第1楽章・第一主題の変形です。

第3楽章は「主題と変奏」と題されていますが、楽譜にははっきりした変奏の切れ目はありません。
6:21から呈示されるレントの主題は第1楽章・第二主題のメロディをコラール風に変化させたものですが、低音域しか使っていないこともありボーヨーとしたつかみどころのない響きです。
7:31から第1変奏、高いところから静かな光が差してくるような印象。
8:49から中音域で深い和音の連なる第2変奏。
9:36から高音が鐘のように響く第3変奏、この変奏は途中からカンタービレのメロディになり、10:31には第1楽章・第一主題の変形が高音で歌われます。
11:22から第4変奏、低音域と高音域で点描風に歌い交わされます。
12:24から第5変奏、テンポはアレグロになり、変奏主題はリズミックな16分音符に変形されます。
この変奏は途中からプレストとなり激しさを増して、13:21から第6変奏マエストーソ、ここでは主題の拡張型と短縮型が同時に組み合わされ、クライマックスを作ります。
15:18から結尾部。 第一主題の音列、第二主題の伴奏和音とメロディが混然一体となっていて、全曲の超短縮された再現部とも言えます。

隅々まで入念に構成された素晴らしい曲です。
無駄な音がひとつもないというか、すべての音に意味があります。


次に収録された「プレスト」は、「ピアノ・ソナタ」第3楽章後半部の初稿です。
じつは「ピアノ・ソナタ」第3楽章は初演後に大幅に改訂されていまして、
ここでは改訂前の初稿が聴けるのです。もちろん初録音。
激しく盛り上がるクライマックスは、決定稿より派手&華麗な気も。
このヴァージョンのどこが気に入らなかったのか・・・どちらも素晴らしいじゃないですか。

あとは小品ですが、最後に収められた桐朋学園のためのピアノ初見曲(3曲)というのが面白い。
3曲とも亡くなる2ヶ月ほど前に作られたとのことで、事実上最後の作品になるのかな。
試験のために作られたそうです。 
こんなムツカシイ曲を初見で弾かされるのですねえ・・・学生は緊張しただろうなあ。
少なくとも2曲目と3曲目は、ピアノ曲として充分鑑賞に堪える名品だと思いました。

(08.2.3.)

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