矢代秋雄/ピアノ協奏曲、2本のフルートとピアノのためのソナタ、
ピアノ・ソナタ(初演ライヴ)
Amazon.co.jp : 矢代秋雄:ピアノ協奏曲(1967 初演)ほか
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Tower@jp : 中村紘子/矢代秋雄: ピアノ協奏曲, 2本のフルートとピアノのためのソナタ,
ピアノ・ソナタ
名曲の初演には、さまざまなドラマがあります。
ストラヴィンスキー「春の祭典」(1913)では、その過激さに聴衆が騒然、
賛成派と反対派の観客がお互いを罵り合い、乱闘まで起こったと言われています。
ウェーベルン「交響曲」(1928)の初演は、奇妙な響きとあまりの短さに
冗談音楽かと思った聴衆が爆笑、別の意味で大ウケだったとか。
そうかと思えばベートーヴェン「交響曲第7番」(1813)は、初演から拍手大喝采、
第2楽章がアンコールされたうえ、すぐに再演が決まったほどの成功作でした。
さて、ナクソス・レーベルから、NHK「現代の音楽」アーカイブシリーズが発売開始されました。
NHKのラジオ番組「現代の音楽」の放送マスターをCD化したもので、初演音源が多いのが特徴。
中断中の「日本作曲家撰集」の替わりってことなんでしょうね。
値段は少々高めですが、今後も続いてほしいシリーズです。
このシリーズから、矢代秋雄(1929〜1976)の代表作3作の初演録音を集めた一枚を聴いてみました。
矢代秋雄/ピアノ協奏曲(1967)は、
個人的には日本人によるピアノ協奏曲の最高傑作だと思ってます。
たいへん好きな曲ですが、残念ながらまだ生で聴いたことはありません。
どこか近くでやってくれないかなあ・・・(ド田舎なので無理)。
ともあれ「ピアノ協奏曲」の初演が聴けるのは嬉しいかぎり。
時は1967年11月29日、ところは上野の東京文化会館。
ピアノ・中村紘子、指揮・森正、NHK交響楽団による演奏です。
じつはこれに先立つ11月5日に、すでに放送初演が行われていて、この日は演奏会初演。
演奏者たちは作品をすでに手のうちに入れているので、初演とは思えないほど完成度の高いパフォーマンスが聴けます。
もちろん熱気・高揚感もしっかり。
とくに中村紘子のピアノの熱さは特筆もので、うっかり触ると火傷するぜなレベル。
第3楽章で、オケがちょっと安全運転気味にテンポを落とそうとしても、
「なにやってるのよ!」とばかりに全力疾走で走りまわり、オケを煽りたてます。
初演だから慎重にいこうとか、そういう計算はこれっぽちもないですねー、カッコイイです。
いくつか小さな傷はありますが、演奏後の熱狂的な拍手にも納得の名演でした。
ただし、この曲を初めて聴かれる方は、岡田博美・独奏のナクソス盤が良いかも知れません。
隅々まで知的にコントロールされたクールな演奏です。
でも私は、「土俗的」とすら言える中村紘子の1968年録音が、おどろおどろしくて一番好きです(←変?)。
なお矢代秋雄のピアノ協奏曲の詳細に関しては、こちらの記事 を参照してください。
矢代秋雄:ピアノ協奏曲(中村紘子・ただしこのCDの演奏ではありません)
続く「2本のフルートとピアノのためのソナタ」「ピアノ・ソナタ」は、
曲の前に矢代秋雄自身の肉声による解説が収録されていて、ラジオ番組ならでは。
矢代氏の声、永六輔にちょっと似ています。
2本のフルートとピアノのためのソナタ(このCDの演奏ではありません)
どちらも素晴らしい曲ですが、とくに「ピアノ・ソナタ」の凄さが少しずつ分かってきた今日この頃。
「ピアノ・ソナタ」に関しては、以前にもご紹介しましたので、よろしければご参照ください。
(11.8.23.)
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