日本管弦楽名曲集(NAXOS 8.555071)



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Tower@jp : 日本管弦楽名曲集; 外山雄三/近衛秀磨/伊福部昭/芥川也寸志/小山清茂/吉松隆


偉大なる廉価盤レーベル、ナクソスが日本人の作品を系統的に録音するプロジェクトを開始、
その第一弾というか、挨拶代わりの一枚です。
思わず引いてしまうジャケットですが、海外ではこういうの、喜ばれるのかな。
内容もことさらに「日本」を強調した作品が多く選ばれているのは、世界を見据えたレーベルとしては当然の戦略か。
たとえば「アフリカの現代音楽」というCDが発売されて、全然アフリカっぽくない音楽が並んでいたとしたら、やっぱり肩すかしにあったように思いますよね。

だからそれはわかる、よくわかるんですがしかし、
このCD1曲目、外山雄三「管弦楽のためのラプソディ」、普通の日本人がこの曲を聴いたら、たぶん大笑いすることでしょう。
「あんたがたどこさ」から「ソーラン節」、つづいて「炭鉱節」(月が〜出った出ぇた〜)が、大管弦楽で壮麗に演奏されるのです。
最後は「八木節」(ちょいと出ました・・・)で、にぎやかに締めくくります。
この曲、昔、N響の演奏会のアンコールで演奏されたときも会場は大ウケ、とても盛り上がりました v(^o^)v
じっさい作曲者の外山氏自身、この曲をしかつめらしい顔で聴かれてもうれしくないでしょうね。
だからこの曲は笑いながら聴くのが正解、と、今回このCDを聴いてつい笑ってしまった私は断言したいと思います。
でも、聴いてると、なーんか恥ずかしくなってくるんですよね・・・

 

2曲目の近衛秀麿「越天楽」は、雅楽の有名曲を管弦楽でやってみましたというもの。
アイデア賞的な1曲で、大変興味深く聴きました。この曲には「黒田節」のメロディが出てきます。

 

つづく伊福部昭「日本狂詩曲」は、「チェレプニン賞」という作曲賞を受賞し、伊福部の出世作となった作品です。
これまた、「なるほどこいつは日本だ」という曲ですね。
このチェレプニン賞、1935年に日本人の管弦楽作品を募集して審査した賞ということですが、審査員が驚くなかれルーセル、オネゲル、イベールなどだったそうで、
受賞後は海外でも演奏されて好評を得たそうです。海外ではこういう曲、ウケるんですね。
具体的な民謡の引用はありませんが、「祭りだわっしょい」 ノリのにぎやかな曲です。

 

あんまり日本民謡のような曲ばかりでは変化に乏しいということか、4曲目、芥川也寸志「交響管弦楽のための音楽」は、
プロコフィエフかショスタコーヴィチの社会主義リアリズム作品をを思わせる軽快な曲。気分が替わっていいです。
 

次の小山清茂「管弦楽のための木挽歌」は、九州民謡を主題とした変奏曲。
またまた日本情緒たっぷり、クライマックスでは大音量で盛り上がります。

最後の吉松隆「朱鷺によせる哀歌」は、いま人気の作曲家、吉松隆の出世作。
弦楽合奏とピアノのための、繊細で現代的な響きが大変美しい音楽。
人気曲だけあって、現在、井上道義盤(カメラータ 30CM 178〜9)藤岡幸夫盤(Chandos CHAN9438)が
入手可能ですが、廉価盤でこの名曲が聴けるようになったのは嬉しいですね。

 

「なんぼなんでもちょっと「日本」を強調しすぎやで」、という気もしないではないですが、
ふだん日本の現代音楽になど全く興味のない人も、聴いておいて損はない1枚ではないかと。
話のネタにどうですか。安いですし(どの店でも1000円以下でしょう)。

(01.12.3.記)

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