ショスタコーヴィチ/ピアノ三重奏曲第1番&第2番 ほか
(三浦友理枝:ピアノ 川久保賜紀:ヴァイオリン 遠藤真理:チェロ 2019年)



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Tower : ショスタコーヴィチ/ピアノ三重奏曲第1番・第2番

NHK−FMのクラシック・バラエティ番組「きらクラ!」で、ふかわりょうとともにパーソナリティを務めるチェリスト・遠藤真理の新しいCD。
ピアノの三浦友理枝、ヴァイオリンの川久保賜紀と組んだピアノ・トリオ・アルバムです。
この三人、ソロ活動のかたわら10年前からトリオを組み、プライベートでも仲良しだそうで、三人で「きらクラ!」に出演したこともあります。
以前ラヴェルの曲を集めたアルバムを出しています。






こんどのアルバムはショスタコーヴィチ/ピアノ三重奏曲第1番&第2番
この曲のCDはすでに何種類か持っているんですが、「きらクラ!」リスナーであり真理さんに時々お便りを読んでもらっている身としては、
発売と同時に購入する以外の選択肢はありません。


ピアノ三重奏曲第1番 作品8(1923)は、作曲者17歳の作品で、最初の室内楽曲でもあります。
このころショスタコーヴィチは結核を患いクリミアのサナトリウムで療養、そこで出会った少女に恋をしました。
曲はその少女(タチアナ・グリヴェンコ)に献呈されています。
13分ほどの単一楽章のロマンティックな曲で、結尾部の高まりはいかにも恋する若者という感じ(下の動画の11:30あたりから)。
この恋、ショスタコーヴィチはけっこう本気だったのですがタチアナのほうはそうでもなく、あっさり別の男と婚約。
ショスタコはフラれてしまいました。

(このCDの演奏ではありません)

ただし翌1924年、モスクワ音楽院作曲家入学試験でこの曲を提出したところ試験官らは絶賛、ただちに入学が認められたといいますから、
「転んでもただでは起きなかったぜ!」というところでしょうか。


ピアノ三重奏曲第2番 作品67(1944)は、円熟期の傑作。
親友の批評家ソレルチンスキーの死を悼んで作曲されました。

弦によるすすり泣くような高音のメロディで始まりますが、じつはこれはヴァイオリンでなくチェロ。
やがてヴァイオリンも入ってきますが、チェロはヴァイオリンよりも高い音域で弾き続けます。
幽霊がゆらゆら踊っているみたいな、不気味で倒錯的な印象を与えます。
さすがは変態ショスタコーヴィチです!(褒めてます)

全曲
(このCDの演奏ではありません)

第2楽章は活発で明るいスケルツォ。
え、これって追悼曲ですよね・・・・・・?

(このCDの演奏ではありません)

第3楽章は悲痛なパッサカリア、追悼曲らしくなってきます。

(このCDの演奏ではありません)

第4楽章フィナーレは全曲中最も長大で、ユダヤの民族音楽クレズマーの雰囲気。、
「ユダヤの主題」と呼ばれるメロディが印象的です(下の動画の0:57から)。
道化師が泣き笑いしながら踊っているようで、グロテスクでもあり、どことなく「死の舞踏」を連想します。
なお「弦楽四重奏曲第8番」にも同じメロディが登場します。
第1楽章や第3楽章の主題も回想しながら、消え入るように終わります。

(このCDの演奏ではありません)


三浦友理枝、川久保賜紀、遠藤真理の演奏は、上品かつ洗練のきわみ。
ショスタコーヴィチが、フランス印象派の曲みたいにオシャレに聴けちゃいます。
録音も優秀であり、「きれいなショスタコーヴィチ」を聴きたいときには最適です。

余白に収められた「5つの小品」は、映画音楽・劇付随音楽などから5曲を選んで編曲したもの。
短くてロマンティックで気の利いた曲のオンパレードです。
本来は2つのヴァイオリンとピアノという編成ですが、このCDではピアノ・トリオで演奏しています。

(このCDの演奏ではありません)

(2020.01.01.)


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