庄司紗矢香/バッハ&レーガー
(2010)




Amazon.co.jp : バッハ & レーガー: 無伴奏ヴァイオリン作品集

Tower@jp : Works for Violin Solo - J.S.Bach, Reger

<曲目>
レーガー/前奏曲とフーガ 作品117の2
バッハ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番
レーガー/前奏曲とフーガ 作品117の1
バッハ/無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第1番
レーガー/シャコンヌ 作品117の4
バッハ/無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番


日本を代表するヴァイオリニストのひとり、庄司紗矢香の新作は
J・S・バッハマックス・レーガー無伴奏作品集(2枚組)。

ともに3曲ずつ収められていますが、演奏時間はバッハ80分32秒に対してレーガー25分31秒
うーん、レーガーをもっと聴きたかったなあ。
2枚全部レーガーでも別に良かったんですけど(←売れない)。

でも、このレーガーはそれくらい素晴らしいのです。
冒頭からいきなり「なんじゃあこりゃあ」と言いたくなるほど
気力充実、覇気横溢、闊達壮大、情緒連綿、
要するにすんげぇ演奏であります。

レーガー/作品117−2の前奏曲、切っ先鋭く激しいパッションたたきつけて熱いのなんの。
そして複雑きわまりないテクスチュアを緻密に腑分けしながらなにやら殺気をはらんだフーガへ。
最高級難度のワザが連続する曲でありながら、
表現の細部まで明確にコントロールしきるとともに、艶やかでみずみずしい音色も存分に響かせます。
 

 ・・・スンゴイですよこれは。

興奮冷めやらず次のバッハ/無伴奏ソナタ第1番を聴くと、こちらは折り目正しい、抑制の効いた演奏。
鋭いアクセントづけを随所にちりばめながらも、細やかかつ繊細に構築。
知的にしてシャープ、哀感と華やぎの交錯に魅了されます。
レーガーのあとで聴くと、バッハの曲がなんか軽く聴こえますね。

つぎのレーガー/作品117−1の前奏曲は、淡いセンチメントをたたえた楚々とした味わい。
鬼のような重音の連続も、豊饒な音でぐいぐい、スケール大きく歌いあげます。
フーガも、張りつめた音と技巧を前面に押し出した迫力の演奏。
「ちょ、ちょっとは肩の力を抜いてくださっても・・・」と言いたくなりますが余計なお世話ですかそうですか。

と、思ったら続くバッハ/無伴奏パルティータ第1番は、ふたたびひそやかに語るように。
バッハでは極力ヴィヴラートを抑えているようです。

 ・・・よ、読めたっ!!

これはつまるところ、「熱いレーガー」「クールなバッハ」を交互に対比させているのでわっ!?

あたかもサウナのあとで冷水につかるみたいに構成して、聴き終わったら体脂肪が落ちているという寸法かっ!?(←落ちるか)

ならば最後に収められたバッハのシャコンヌの、ひそやかな音運びにも得心が行くというもの。
これほど澄んだ音で静かに弾かれた「シャコンヌ」も珍しいですが、内に秘めた緊張は並々ならぬものがあります。
厳粛なるシャコンヌ。

 

たまらなく刺激的で面白い2枚組であります。
そして「レーガー、いいじゃん」と思われた方には、「無伴奏チェロ組曲」 「無伴奏ヴィオラ組曲」もぜひどうぞであります。

レーガーはバッハを崇拝し、「ブランデンブルク協奏曲」や「管弦楽組曲」をピアノ連弾に編曲したりしてますから、
同じCDにバッハとともに収録されてさそ喜んでいることでしょう。

  レーガー:シャコンヌ 作品117−4(庄司紗矢香)
  

(11.4.26.)

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