プロコフィエフ/ヴァイオリン・ソナタ第1&2番ほか
(庄司紗矢香・Vn イタマール・ゴラン・Pf)
Amazon.co.jp : プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第1番&第2番
若き名ヴァイオリニスト、庄司紗矢香の3枚目のアルバム。
前作ではシマノフスキのヴァイオリン・ソナタという珍しい曲をとりあげましたが、
今回もプロコフィエフの2つのソナタ&ショスタコーヴィチの前奏曲集(ヴァイオリンとピアノのための編曲版)という渋い選曲。
二十歳やそこらのヴァイオリニストが弾く曲ですかこれが。
プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタには、たいへん世評高い一枚があります。
クレーメル&アルゲリッチ盤(ドイツ・グラモフォン、1991年)で、これは私の刷り込み演奏でもあります。
壮絶で鬼気迫るパフォーマンス。第2番のスケルツォを初めて聴いたときの衝撃は忘れられません。
(まさに悪魔的!)
同じレーベルですし、庄司紗矢香もクレーメル盤は当然念頭にあったはずで、さてさてどういう演奏なのかな。
やはりと言うか、迫力という点ではクレーメル&アルゲリッチのほうが上ですが、
庄司&ゴランは、繊細さ、デリケートな響きという点で、この曲のまた別の面を聴かせてくれます。
ピアニストの違いが、やっぱり大きいのかな。
アルゲリッチの即興的で挑みかかるようなピアノだと、どうしても丁々発止と渡り合う演奏になりますが、
堅実な伴奏ピアニストであるゴランが相手だと、じっくり自分の解釈を練る事ができます。
結果、細かいニュアンスや表情は、庄司紗矢香の演奏のほうが丁寧で好ましいのでは。
エキセントリックでデモーニッシュだと思っていたプロコフィエフのソナタが、優雅でロマンティックな音楽として立ち現れるのは新鮮な驚き。
「ホントはこういう曲だったのか、これ」と、思わされます。
たとえて言えば、クレーメル&アルゲリッチが、スパイスたっぷりふりかけた血の滴るステーキだとしたら、
庄司&ゴランは、同じ肉を使ってあっさりした冷しゃぶを作ったようなものか。
素材自体の味を上手く生かしているのは、以外と庄司紗矢香さんのほうかもしれません。
ヴァイオリン・ソナタ第2番 第4楽章
(溌溂としたフィナーレ)
余白に収められたショスタコーヴィチも、とても面白い。
「ピアノのための24の前奏曲 作品34」のうち14曲をヴァイオリンとピアノのために編曲したもの。
どの曲も1〜2分と短いので、庄司さんの表現の多彩さを存分に味わえます。
いわばメインディッシュの後の、よりどりデザートか。
どうも今回は食べ物の比喩が多いなあ。 はい、実は腹減ってます。 そろそろ夕ごはんだな。
前奏曲 第10番
(妖しくも蠱惑的なポルタメント)
(04.5.16.記)
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