アルビノーニ/ADAGIOS
(クラウディオ・シモーネ指揮 イ・ソリスティ・ヴェネティ)
(1996)



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イタリア・バロックの作曲家、トマゾ・アルビノーニ(1671〜1751)のもっとも有名な曲は、「弦とオルガンのためのアダージョ」



しかしこの曲は20世紀の音楽学者ジャゾットによる偽作でありまして、アルビノーニの作品ではありません。
そのあたりの事情については、「こちらの記事」をお読みください。

にもかかわらずいまだにアルビノーニといえば「弦とオルガンのためのアダージョ」なんですよね。
「代表作が自分の作品ではない」という悲哀と皮肉をあの世でかみしめているであろうアルビノーニ、その霊を慰めるべく企画されたのがこのCDです(←嘘)。
アルビノーニの曲の緩徐楽章を20曲以上集めました。

といっても新たに録音したわけではありません。
1970年代にクラウディオ・シモーネ率いるイ・ソリスティ・ヴェネティが録音した音源を適当に並べたお手軽なコンピレーションであり、
1990年代の「アダージョ・ブーム」に便乗した一枚であります。
最近中古で入手し、あまり期待せずに聴きはじめたのですが・・・。

(作品9−6 第2楽章)

(作品9−2 第2楽章)

 ・・・なにこれ、滅茶苦茶ええやん!


アルビノーニってどこか上品で、キャッチーさはない代わりに飽きがこないというか、オトナっぽい落ち着きがある気がします。
美しくも艶のある音色で奏でられる息の長いメロディに、抒情的な気分が静かに盛り上がります。

(作品10−5 第2楽章)

イ・ソリスティ・ヴェネティの演奏は力みも誇張もなく、美しい歌をしっとりと真摯に歌います。
イ・ムジチにくらべて表面的でムード音楽みたいと言われるイ・ソリスティ・ヴェネティですが、
淡々と美音をつむいでゆくその演奏にはライトな心地よさがあります。
そしてピエール・ピエルロのオーボエの音色の艶っぽいこと!

(作品9−3 第2楽章)

じつはシモーネ/イ・ソリスティ・ヴェネティによるアルビノーニのCDは結構持ってるんですが、アダージョ楽章だけを集めるとまた違った魅力があります。
作品の脂っ気のなさが、余計に浮世離れした純度を高めていると言えるかもしれません。
洗練された身のこなしでさらりと魅せるアルビノーニ、マタタビ的な心地良さに陶酔してしまいます。

(作品9−5 第2楽章)

安易な企画のように見えて(いや実際安易な企画ですが)、聴いてみるととても素敵なアルバムでした。
アルビノーニも草葉の陰で喜んでいるのではないでしょうか。
とはいえアルバム冒頭にはしっかり「弦とオルガンのためのアダージョ」が収録されているのですが。

(2020.08.01.)


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