3大・なんちゃってバロック名曲


親分:きょうは「3大・なんちゃってバロック名曲」を聴くぞ〜!

ガラッ八:なんですかそれ?

親分:
いやあ、このHPの管理人が勝手に言ってるだけなんだがな。

   @アルビノーニのアダージョ

   Aヴィターリのシャコンヌ

   Bカッチーニのアヴェ・マリア


  この3曲、バロック音楽と思われているがじつはバロック音楽ではない、しかも作曲者もおそらく別人なんだ。

ガラッ八:へえー、なんでまたそのようなことに。

親分:まずは「アルビノーニのアダージョ」
 

ガラッ八:綺麗な曲ですよね、ちょっと暗いけど。

親分:トマゾ・アルビノーニ(1671〜1750)は、ヴィヴァルディと同時期に同じ街ヴェネツィアで活躍した作曲家。
  「アダージョ」は、アルビノーニの一番有名な曲といっても良い人気曲だ。

ガラッ八:あっしでも聴いたことありますからね。

親分:この曲は、レモ・ジャゾット(1910〜1998)というイタリアの音楽学者が1958年に発表した。
  本人はドレスデンの図書館でアルビノーニの未出版のソナタの楽譜を発見、緩徐楽章のメロディを使って曲を「復元」したと主張したが、
  のちにジャゾット自身の完全な創作だったことがわかった。

ガラッ八:へえー、なんでまたそんなことを。

親分:そのほうが受け入れられやすいと思ったんだろうな、実際またたく間に人気になり、1963年にはオーソン・ウェルズ監督の映画「審判」に使われて大ヒット。
  なお曲の版権はしっかりジャゾットが握っていた。

ガラッ八:ジャゾットさん、儲かったでしょうね。

親分:あと、この曲のおかげでアルビノーニの名前も世界に広まった。
  それまでほぼ無名だったが、いまやイタリア・バロックではヴィヴァルディに次ぐ人気だ。

ガラッ八:ジャゾットさんもアルビノーニさんも、ウィン/ウィンってわけですかね。

親分:まあ、いまだにアルビノーニの代表作扱いされているのはどうかと思うが・・・それだけいい曲ってことだけど。
  なおジャゾットはもともとアルビノーニの研究者で、彼の作品目録をはじめて作成したことでも知られている。

ガラッ八:アルビノーニの名前で一儲けしたけど、真面目な学者さんでもあるんですね、まあそもそも曲自体が良くなきゃ売れませんしね。

親分:次はヴィターリのシャコンヌだ。
 

ガラッ八:こりゃまたキレイな曲ですね。ピンと張りつめた緊張感がなんとも言えずいい感じでやんす。

親分:ヴァイオリン・リサイタルなどでよく演奏される人気曲だ。
  イタリアの作曲家トマゾ・アントニオ・ヴィターリ(1663?〜1745)の作品ということになっているが・・・・・・怪しい。

ガラッ八:どう怪しいんで?

親分:この曲はヴァイオリニスト、フェルディナント・ダヴィッド(1810〜1873)がヴィターリのシャコンヌを編曲したものとして発表した。
  ライプツィヒ・ゲヴァントハウスの初代コンサート・マスターにしてメンデルスゾーンの親友であり、彼の有名なヴァイオリン協奏曲を初演した人でもある。

ガラッ八:立派な人じゃないですか。

親分:しかしダヴィッドはヴィターリ自身の楽譜ではなく、18世紀の無名作曲家リンダーが編曲した楽譜をさらに編曲したそうなんだ。
  もとになったヴィターリの作品は今も不明で、リンダーが真の作曲者である可能性も否定できない。

ガラッ八:うーん、ややこしいですよう、リンダ困っちゃう。

親分:さらにややこしいことに現在広く演奏されているのは、ダヴィッドの楽譜をヴァイオリニストで指揮者のレオポルド・シャルリエ(1867〜1936)がさらに大幅に改訂したもの。
  こうなるともう、誰の作品と言っていいのかわからないな。

ガラッ八:・・・もう誰の曲でもいいです、曲自体は超素敵なんですから。

親分:最後にカッチーニのアヴェ・マリア
 

ガラッ八:これまた綺麗な曲でやんす。

親分:グノー、シューベルトとともに「3大アヴェ・マリア」とも言われている。
  ジュリオ・カッチーニ(1545?〜1618)は、「麗しのアマリリ」などで知られるイタリア・ルネサンス期の作曲家だが、そもそもこの曲の作曲者でもなんでもない。

ガラッ八:なんなんですかそれは。

親分:真の作曲者は、ウラディミール・フョードロヴィッチ・ヴァヴィロフ(1925〜1973)。
  ソ連で活動したリュート&ギター奏者で、作曲もしたが、なぜか自作曲を過去の作曲家の名前で発表することが多かったらしい

ガラッ八:なんでまたそんなことを。

親分:作曲者の娘の証言がある。

   「些末な無名作家の独学作品など 決して出版してもらえないと父は分かっていました。
   でも父は どうしても作品を聴衆に届けたいと願っていたので 古典作家たちの栄光を無名作品に与えたんです」


  あと社会主義のソ連では宗教は否定されていたから、「アヴェ・マリア」なんてタイトルの曲を自分の名で発表することは危険でもあっただろう。

ガラッ八:うーん、わかるような気もします。

親分:「アヴェ・マリア」は1970年の作曲らしいが、世界的に広まったのはソ連崩壊後の1990年代以降。
  ヴァヴィロフは1973年に若くして膵臓がんで亡くなったそうだ、ちょっと気の毒だな。

ガラッ八:長生きしていれば自分の曲が大人気になるのを見られたのに・・・。

親分:ちなみに、こちらはジュリオ・カッチーニの本当の作品。全然スタイルが違うのが一聴瞭然だ。
  ↓
 麗しのアマリリ
 

(2017.12.09)

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