森見登美彦/四畳半タイムマシンブルース
(原案:上田誠 角川書店 2020年)



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森見登美彦/四畳半タイムマシンブルース

阿呆な大学生が山ほど出てくるハチャメチャコメディ、森見登美彦「四畳半神話大系」(2005)のキャラクターたちが、
阿呆な大学生が山ほど出てくる大傑作SF「サマータイムマシン・ブルース」(映画は2005)の世界で大騒ぎするという、
両作品をこよなく愛する私としては何を措いても精進潔斎ののちに熟読吟味するべき一冊である。

読み始めて意外だったのは、「四畳半」のキャラたちがしっかり記憶に残っていたこと。
姑息で邪悪な疫病神・小津を筆頭に、酔うとそのへんの人の顔を舐める美女・羽貫さん、はるかな昔から下鴨幽水荘に下宿している師匠にしてヌシ・樋口氏
「ふわふわ戦隊モチグマン」と名付けた小さなクマのぬいぐるみの一群とつねに行動を共にする美少女・明石さんなど、
いずれ劣らぬ変人たちが15年ぶりに私の大脳の奥のほうの半分腐りかけた穴倉からぞろぞろ這い出してきて「おひさ〜」と御挨拶のうえで

 「仲良きことは阿呆らしきかな」

と唱和して腰に手を当てラムネをぐいと飲み干すもので、私も思わず小麦を発酵させた炭酸飲料を飲み干してしまった。
それにしてもなんというキャラの濃い連中だろう。
もう彼らを忘れることは生涯不可能なのかもしれない、恐ろしいことである。

とはいえ、ストーリーは「サマータイムマシン・ブルース」そのまま。
これから起こることをすでに記憶している未来人またはタイム・トラベラー視点で楽しく読了した。
「サマータイムマシン・ブルース」を知らずに読むほうが、より楽しいかもしれないと思わぬでもない。

 「成就した恋ほど語るに値しないものはない」

というキメ台詞もちゃんと登場、最後はめでたしめでたしの大団円となったのであった。

プロモーション動画


(2020.09.05.)

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