森見登美彦/美女と竹林
(光文社 2008年)



Amazon.co.jp : 美女と竹林


<ストーリー>
2006年晩夏、作家森見登美彦氏は、
『夜は短し歩けよ乙女』という小説をどう完結させるか悩んでいたが、
ふと唐突に作家業のみに依らない“多角的経営”を思いつき、
かねてから愛してやまない
竹林を伐採・整備することによる竹林経営を志す。
職場の先輩・
鍵屋さんの家の竹林を刈らせてもらえることになった登美彦氏。
壮大にして意味不明な
竹林無駄話ここに始まる。
ところで美女はどこだ


私の住んでいる四国・香川県は、いま大変な水不足であります。
「四国の水がめ」と呼ばれる早明浦ダム(さめうらダム)の貯水率は10%を切り、このままいくと夜間断水が始まろうかという気配。
ひびわれた大地の上を「水、水をくれえ〜」とのたうち回る日が来るのではと恐れおののいています(←大げさ)

私が香川県に引っ越してきたのは平成6年。
おお、今も忘れられん、あの夏は大変な渇水でのう・・・。(←長老か)
私の住む街では23時〜翌朝6時まで夜間断水に。
県庁所在地の高松市はもっと大変で、一日数時間しか水が使えなかったはず。

ところが、好奇心に駆られて夜中に蛇口をひねってみると、なんと断水中でも水は出るではありませんか。
じつは給水が止まっても水道管の中には水がたまっているので、それが出てくるのですが、
管がいたむので出してはいけないそうです。
わかりましたかみなさん(←自分は出しといてエラソーニ)

まあ、お天気ばかりは人間風情があれこれ言ってもしょうがないです。
じたばたせずに、のんびり本でも読みながら、雨を待つしかありません。

こういうときに読む本は、気楽に笑って読めるのがいいですね。
というわけで森見登美彦の新作「美女と竹林」

じつは森見登美彦氏、幼少のみぎりより竹林を愛してやまないそうで、大学でも竹の研究をして、結局全然ものになりませんでした。

その登美彦氏が一念発起、というか明らかに雑誌連載のネタをひねり出すため苦し紛れで思いついた竹林の手入れ。
親友・明石氏を巻き込み、担当編集者の皆さんを巻き込み、雨にも負けず薮蚊にも負けず、
たくましい膂力を存分に発揮して、見事な竹林を作り上げるのでありました・・・

 なわけはないです。

明石氏は、「太陽の塔」に登場する飾磨のモデルらしいです。
そういえば「新釈・走れメロス」の芹名にも通じるものがあるような。

「無益で楽しい文章だよ」
と作者もブログに書いてますが、まさにそのとおり。
内容はじつにしょーもないです。 でも不思議に面白い。
いや、実はわれわれは「妄想系私小説・お笑い風味」という新しい文学ジャンルの誕生に立ち会っているのか?(そんなわけあるかい)
内田百のエッセイにも似た、飄々としたとぼけた味わいです。

でも美女はどうした。

(08.8.27.)


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