森見登美彦/夜は短し歩けよ乙女
(角川書店 2006年)



Amazon.co.jp : 夜は短し歩けよ乙女

「夜は短し歩けよ乙女」公式HP

<ストーリー>
「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、
夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めます・・・。

我ながらあからさまに怪しいのである。そんなにあらゆる街角に俺が立っているはずがない。
「ま、たまたま通りかかったもんだから」という台詞を喉から血が出るほど繰り返す私に、
彼女は天真爛漫な笑みをもって応え続けた。「あ! 先輩、奇遇ですねえ!」(本文より)


二人を待ち受けるのは奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々・・・



10月に、美しくも朧な悪夢的怪談集「きつねのはなし」を出したばかりの森見登美彦さん、
今回は得意路線であるファンタジック・ラブコメディで攻めて来ました。

「黒髪の乙女」に恋焦がれ、ストーカーまがいの行動に及ぶくせに、
告白どころかほとんど口もきけず、妄想ばかりが暴走する「先輩」
その描写は、雪舟の描いた鼠の絵もかくやと思わんばかりの迫真ぶり。
相変わらず「無駄にプライドの高い優柔不断男」を書かせたら天下一品の森見氏、
その筆致は妖刀村正のように凄光りしてます。

しかし対する「黒髪の乙女」は・・・こんな子、おらんっ! いませんっ! 絶滅種! 
あり得んでしょう今時こういう純粋天然乙女はっ!
と突っ込まざるを得ない面はありますが、そこはファンタジーです。
そう、日本ファンタジー小説大賞受賞者なのです森見氏は。
ファンタジーの登場人物ですから、もうなんでもありでしょう。 じつに都合がよろしい。

実際ほかにも、「天狗」を自称する浴衣男・樋口さん、大酒のみの美女で酔うと人の顔を舐める羽貫さん
自家用三階建て電車を乗りまわす謎の富豪老人・李白さん
恋が叶うまでパンツを穿き替えないと誓った大学生・パンツ総番長など、
ほとんど妖怪みたいな登場人物が入り乱れて、京都の街は大騒ぎと言うか大笑い。

まあ「黒髪の乙女」にしてからが、可憐で天真爛漫ではあるものの、
酒を飲めば底なし、演劇に飛び入りすればいきなり見事な演技力、周りがみな風邪で寝込んでもひとりだけピンピン、
おまけに巨大な緋鯉の縫いぐるみを背負って学園祭を闊歩・・・って、やっぱりこの子も妖怪かっ?!

ラスト近くの飛行シーン、綺麗です。 ちょっと宮崎アニメっぽいです。
心温まるハッピーエンドも良いですね。
時系列的には、「太陽の塔」の前日譚と思われるので、手放しに喜べない気もしますが・・・
このあと、二人にいったい何が起こるのだろう??
しかしともかくハッピーエンド、良いではありませんか、めでたい!! なむなむ!!

(06.12.4.)

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