バッハ/管弦楽組曲(レーガー編曲によるピアノ連弾版)
(Hector Moreno & Norberto Capelli  2000年録音)



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今年(2023年)生誕150年のマックス・レーガー(1873〜1916)は、優れたピアニストでもあり、ヨーロッパ中で精力的に演奏しました。
自作のピアノ曲を引っさげてコンサート・ツアーを行ったりしてます。
現代のアーティストと変わらないですね。

レーガーは J・S・バッハを崇拝し、「バッハに帰れ」をモットーにしていました。

当時の音楽評論家の書いた記事です。

 私がレーガーに、あなたは一体どんな名人のもとで学んだのかと尋ねると、彼は落ち着き払って「バッハのもとで」と答えた。
 そして私が、あなたはどんな名ピアニストのもとでその並外れたポリフォニーの演奏技術を手に入れたのかと尋ねると、彼は再び「バッハのもとで」と答えた。
 彼が真実を述べていたことは、レーガーの音楽を聴いてはっきりと分かった。


そんなレーガーはバッハの管弦楽曲や協奏曲をピアノ連弾に編曲しています。
1906年にブランデンブルク協奏曲を、つづいて1907年に管弦楽組曲をピアノ連弾に編曲し、それらを携えてコンサート・ツアーも行ったそうです。

 組曲第2番 ロ短調
 

本来はフルートと弦楽合奏のための「組曲第2番」が、驚くほど自然な所作でピアノ曲に変身して澄ました顔をしています。
「あれ、これってもとはピアノ曲だったっけ?」と思ってしまうほど。

「組曲第3番」の有名なアリアも、もとは弦楽器の曲だったとは思わせないほどの自然なアレンジ。
このヴァージョン、もっと演奏されてもいいんじゃない? 

 組曲第3番 ニ長調 アリアから
 

「組曲第1番」「組曲第4番」は、もともとあまり聴いてなかったこともありピアノでも全く違和感なし(オイオイ)。

 組曲第1番 ハ長調
 

爽やかでチャーミングな音楽で、実に楽しいです。
もっともレーガー本人はそれほど爽やかでもチャーミングでもなく、身長は2m、体重はゆうに100キロを超え、
大食漢で大酒飲みでヘビースモーカーでした。

「演奏会のあと、ひとりで10リットルのレモン水を飲み、続いて同じ量のココアを、あるいは風呂桶いっぱいのコーヒーを飲んだ」とか、
「ある医師が、レーガーが何十本ものソーセージを次々に食べるのを目撃したが、その光景がどうしても信じられなかった」といった伝説が残されています。
フードファイター顔負けですね。

こんな逸話もあります。
酒場でしたたかに飲んだ帰り道、尿意をおぼえたレーガー、壁に向かってゆうゆうと用を足していると、後ろから制服の警察官が肩をたたきます。
「おいおい、それは禁じられているおこないだぞ。罰金5マルクだ」
するとレーガー少しも慌てず、ポケットから10マルク紙幣を取り出し、肩越しに警察官に手渡しながら、
「そうか、ほら君の分もある。並んで一緒にどうだ」

バッハも酒飲みで豪快な性格だったというから、このふたりもし対面したらすこぶる気が合ったんじゃないでしょうか。

(2023.03.25.)

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