シューベルト/弦楽五重奏曲
(アルバン・ベルク四重奏団+ハインリヒ・シフ 1983録音)



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ただいま、フランツ・シューベルト(1797〜1828)の弦楽五重奏曲にちょっとはまっています。
以前から好きな曲ではあったのですが、先日なにげなく聴いて、ハートをズッキューンと打ち抜かれてしまいました。

 なんと言えばよいのでしょう、この曲の時空を超越した素晴らしさは!

原っぱで大きな木の幹にもたれながらそよ風に吹かれているような安らかさをたたえた曲であるいっぽう、
ふと暗い影が差す瞬間があったり、低音が不気味にうごめくような部分もあります。

この曲が完成したのは1828年の9月、そして11月に作曲者は31歳で世を去ります。
作曲中も体調は最悪だったようで、おそらく自分の命が長くないことはわかっていたことでしょう。
そんなとき、私なら絶対なんにもする気にならないと思いますが、
シューベルトは生きることすなわち作曲することという作曲馬鹿でしたから、死が目前に迫っても作曲し続けずにいられなかったわけですね。
しかもそれが至高の名曲になってしまう・・・、天才の底知れなさ、業の深さ、なんか恐いです。

第1楽章は柔らかで息の長い旋律に満ちたソナタ形式。
なかでも二台のチェロで歌われる第二主題のシンプルな美しさには、いつも心を慰められます(下の動画の2:00から)。



第2楽章はため息のようなシンプルなフレーズで始まる安らぎのアダージョ。
しかし中間部では短調となり、複雑なリズムが激しく躍動し、転調を繰り返します、なにこれ怖い(下の動画の5:00から)。



第3楽章はエネルギッシュなスケルツォ。
かなり込み入った構造をしていて聴き飽きません。
しかし中間部ではなんとアンダンテ・ソステヌートに速度を落とし、拍子も2拍子に転じるという大胆さ(下の動画の4:18から)。
この部分、シューベルトが自分のために書いた葬送行進曲のように聴こえるのは深読みでしょうか。



第4楽章は、ドイツ舞曲風のはきはきした主題が魅力的なフィナーレ。
ロンド風ですが、型にはまった形式はなく、いろんな主題を交えながら自由気ままに進んでゆきます。
この終楽章の天国的ともいえる天衣無縫さは、モーツァルト/ディヴェルティメントK.563の終楽章に通じるものがあるような気がします。
最後はテンポを速め、主題をしつこいくらいに繰り返しながら賑やかに曲を閉じます。




CDは数種類持ってますが、現在のお気に入りはアルバン・ベルク四重奏団ハインリヒ・シフが加わった1983年録音盤。
やや速めのテンポでまとめられた名演奏で、細部まできっちり血が通っています。
繊細ではあるけれどクールなスタンス、抒情的な場面でも情緒の深みにズブズブはまってしまわないのが、今の私には好ましいです。

第1・2楽章


(2019.07.02.)

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