シューベルト/ピアノ・ソナタ集(5枚組)
(クリスティアン・ツァハリアス)



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怖くないシューベルト、あります


わたくし、シューベルトのピアノ・ソナタ、とくに後期の曲には、なんとなく「怖い」イメージを持っていました。
一聴、物柔らかで穏やかなんですが、底の方にどす黒いものが渦巻いている感じ。

 俺貧乏だし、モテないし、梅毒だし、体調最悪だし、若いのにもう死にそうだし・・・う〜、うらめしいぃ・・・。

いわく言い難い怨念が、優しげな響きの影にチラチラと見え隠れするのです。

とくに最後の3つのソナタ、D.958、D.959、D.960は、病魔により衰えゆく体調の中で、
死を意識しつつ書かれましたから、当然といえば当然か。
最後の変ロ長調D.960を完成後2ヶ月、わずか31歳でシューベルトは世を去りました。

これまで聴いてきた主な演奏は、内田光子、リヒテル、ポリーニ、アファナシエフ
どれも評価の高い名演奏です。
しかし彼らの演奏って、「深淵」とか「彼岸」とか「超然」とか「迷わず成仏」とか、天国的用語で形容されることが多いような・・・。
とくにアファナシエフ!
以前「幻想ソナタ」の超おどろおどろしい演奏をご紹介したことがあります。


 とにかくシューベルトは怖いのです。


ところがそんなイメージを鮮やかに覆してくれるのが、クリスティアン・ツァハリアス
このシューベルト・ボックスの、軽やかで優美なこと!

ツァハリアスは曲にしみ込んだ怨念・情念きれいに洗い流して、
水晶のような澄んだ音で美しい歌をつむいでゆきます。
ならば表面的で浅薄な演奏なのかと言えばさにあらず。
構成は堅固、解釈は洗練、しなやかで感受性豊かで、もちろんテクニックはキレキレです。
速めのテンポですっきりまとめた、客観的でセンスの良い演奏
シューベルトの美しいメロディを素直に堪能できます。

いままで聴いてきた巨匠たちの、重くてじっとりしたシューベルトは何だったんだろうと思いましたね。
もちろんそれらは、シューベルトの底知れない深さを教えてくれる名演奏なのですが、
こういう軽妙でソフトなシューベルトも良いものです。

寝る前にベッドの中で聴いても、良い夢が見られそうで安心です。
アファナシエフだと絶対うなされますから。

 シューベルト:ピアノ・ソナタ「幻想」D.894・第1楽章
 

(2013.9.23.)

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