吉松隆/左手のためのピアノ曲集
(大嶋=ライアン・ユミコ:ピアノ)



Tower : Yoshimatsu/Piano Works for Left Hand

Tower : 吉松隆/左手のためのピアノ曲集(国内流通盤仕様)


<曲目>
タピオラ幻想 作品92
アイノラ抒情曲集 作品95
ゴーシュ舞曲集 作品96



2002年、脳卒中で右片麻痺となったピアニスト・舘野泉(1936〜)が作曲家・吉松隆(1953〜)に左手のためのピアノ曲を依頼。

依頼に応えて2004年に書かれたのが5曲からなる組曲タピオラ幻想 作品92です。
台湾由来で女子高生に人気の飲み物にちなんだ曲ですね〜って、そりゃタピオカじゃ!

「タピオラ」とは、フィンランド神話の森の神(タピオ)が住むところという意味。
シベリウスが晩年に同名の交響詩を書いています。
吉松隆はシベリウスの大ファンだし、舘野泉はフィンランドと縁が深く、ヘルシンキ在住。
舘野泉を森の神(タピオ)に見立てているのでしょうか。

 第1曲 光のヴィネット (ひそやかで神秘的な前奏曲)
 

 第2曲 森のジーグ (森の中で妖精が踊っているよう)
 

 第5曲 風のトッカータ (樹々の間を吹き抜けるやさしい風)
 

2006年には7曲からなるアイノラ抒情曲集 作品95が書かれました。
「アイノラ」はシベリウスが晩年を過ごした山荘の名前。
「アイノ」とはシベリウスの愛妻の名前、つまり「アイノがいるところ」「アイノ荘」という意味になります。
アイノさん、若いころはシベリウスの酒癖の悪さと経済的困窮で苦労したそうですが・・・。
現在アイノラはシベリウス博物館となり、夫妻はそろってアイノラの庭に埋葬されています。

 (アイノさん美人です)

この曲はアイノラと周辺の風景からインスピレーションを受けて作られました。

 第2曲 アラベスク (池に降る雨粒の波紋を見るような繊細なアラベスク)
 

 第7曲 カリヨン (教会の鐘がにぎやかに鳴り響く)
 

どちらの組曲も「プレイアデス舞曲集」に通じるものがあり、ロマンティックで可憐。
表情豊かな音で感情をストレートに開放してきます。
コンパクトでインティメートな世界に反響する透明で邪気のない音のたたずまい。
左手だけで演奏することでかえって透明な軽さを得たかのようです。

しかし同じく2006年に書かれたゴーシュ舞曲集はポップでリズミカル。
ロック、ブルース、タンゴ、ウギウギの4曲からなり、ジャジーでブルージーな遊び心を漂わせます。

 第3曲 タンゴ (なるほどこいつはタンゴだね)
 

 第4曲 ブギウギ (なるほどこいつはブギウギだね! 左手だけとは思えないほどに重厚)
 

吉松隆というよりはちょっとカプースチンみたいで、意外性があって面白いです。

しかし片手で演奏が成立し、CDまで作れてしまうなんでピアノならではですね。
他の楽器ではそうはいきません。
「左手のためのチェロ曲集」とか・・・あ、ピチカートならなんとかなるか? それとも足の指で弓を保持する?? (しばし妄想)

演奏は大嶋=ライアン・ユミコ
アメリカで活動するピアニストで、日本人作曲家の紹介にも力を入れている人だそうです。

(2022.07.16.)


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