吉松隆/星夢の舞
(吉村七重:箏 日本音楽集団 2006年)



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作曲家・吉松隆(1953〜)は、邦楽器のためにもたくさんの曲を書いています。
とくに、筝奏者・吉村七重とのコラボは長きにわたり、これまでに3枚のアルバムをリリースしています。

「星夢の舞」はその2枚目にあたり、和楽器のみによるアンサンブル・アルバムです。
「プレイアデス舞曲集」ぽくって好きなのです。

10曲からなる組曲「星夢の舞」作品89は、「星」というだけあって「プレイアデス舞曲集」の和楽器版のおもむき。
作曲者は「邦楽アンサンブルによるエスニック・デジタル・ダンス」だと言ってます、なんのこっちゃ。

 第1曲「序の舞」
 

・・・もろに「プレイアデス」しています、和楽器のみで演奏しているなんて、言われなければ気づきません。
というかフルートじゃないんですかこの笛の音。

和楽器ぽさを前面に押し出した曲もありますが、爽やかな色彩感とファンタジーはやっぱり吉松隆

 第3曲「喜々」 (三味線が「和」な感じでいいですねえ)
 

最後の「舞戯の舞」は、要するに「ブギ」です、ブギウギです。
冗談としか思えないタイトルですが要求されるのは超絶技巧、それを大真面目かつノリノリで演じる奏者の方々・・・、プロってすごいな。
でもじつは「なんでわしらがこんな阿呆な曲やらなあかんねん」と思いながら演奏してたりして。

 第10曲「舞戯の舞」
 

笙と二十絃筝のための「星幻譜」作品97は、笙の雅な音色にやられます。
虫の音のような、天から差し込む光のような、マイクのハウリング音のような(コラコラ)神秘的な笙をバックに、筝の音が蝶の群れのように舞い踊ります。
いにしえの楽器なのに、響きは未来的かつ宇宙的。
頭の片隅をチリチリと刺激してくる違和感を味わいながら、その奥から上澄みのように浮き上がってくる抒情に酔うのであります。

 第3曲「急」
 

尺八と二十絃筝のための「風夢の舞」作品98は、まさに風が舞い踊るさまを音に写し取ったよう。
響きが変幻し音が動いて、一幅の絵巻物が紐解かれるように流れ過ぎてゆくサラサラとした快感。

 第5曲「風早」
 

 第6曲「夕凪」 (静かな曲で、個人的には一番好き)
 

吉松隆の才気が存分に注入された素晴らしい作品ばかりです。

和楽器を聴くと日本人のDNAが刺激されるのか、はるかな郷愁に心を遊ばせるような神妙な気持ちになります。
ふと気づくと和服に着替えて正座して抹茶を喫していたりします(嘘です)。

(2021.01.11.)

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