吉松隆/交響曲第5番、アトム・ハーツ・クラブ組曲第2番
    鳥たちの祝祭への前奏曲

(藤岡幸夫・指揮 BBCフィルハーモニック) (CHANDOS 10070)



Amazon.co.jp : Yoshimatsu: Symphony No. 5

HMV : 吉松隆/交響曲第5番 icon

Tower@jp : 吉松隆: 交響曲 第5番

作曲家・吉松隆氏の最新ディスクです。
演奏時間46分の大作・「交響曲第5番」。 
作曲者自身つぎのように述べています。

「第5番」というナンバーの付く交響曲を書くにあたっては、ひとつの夢があった。
 それは「冒頭は(例の)運命のモチーフで始まり、最後はハ長調の主和音(ドミソ)で終わる」ということである。
 この(恐ろしい)夢は、音楽を始めた(そしてまだチャイコフスキーやシベリウスくらいしか交響曲を知らなかった)時代には
 単なる微笑ましい〈少年の夢想〉にすぎなかったのだが、
 その後、交響曲どころかドミソすら非現実的な夢として封印された(あの忌まわしい)現代音楽全盛の時代を経るに至って、
 怒りとともに増幅された確信犯的な〈課題〉として育っていったような気がする。


というわけで、本当にこの曲は「タタタターン」のフレーズで始まってしまいます。
ベートヴェンの5番よりむしろマーラーの5番を思わせますが5番は5番。
各楽章には、作曲者による簡単な解説がそえられています(黄文字で表記します)。

第1楽章:3つの異質なモチーフが登場する軋んだ序奏と、後悔と希望とがいびつに錯綜しながら疾走する分裂症的なアレグロ。

 
焦燥感に駆られたような急速部分と、叙情的なエレジー風の部分が交錯するスケールの大きな楽章。
 吉松さんの「やかまし系アレグロ楽章」には、言うてはなんですがどこか「こけおどし」的雰囲気が漂うのですが、
 この曲も例外ではありません。
 もっともご本人がHPで次のように発言しているところを見ると、確信犯か。
古今の「第5番」というのはいずれも、その作家の代表的「力作」でありながら
 どこか 「空騒ぎ」的な要素もあり、その点についても伝統にのっとったつもり(笑)


 

第2楽章:冷笑的で悪魔的な乾いたスケルツォ。ジャズ風のベース・ラインに乗って悪夢が皮肉な笑みの中で跳梁跋扈する。

 うーん、もろにジャズです。ノリノリです。ジャズとスケルツォって、よく合いますね。
 「悪魔の嘲笑」を感じさせる、洒落た楽章。中間部は「狂った鳥達のさえずり」か。

第3楽章:女性性によせる悲歌風のアダージョ。星くずの下での鳥たちの夢と回想、そして亡き妹へよせるワルツの残像。
 アダージョの美しさには定評ある吉松氏ですが、これまた絶美のアダージョ楽章。
 マーラーにハチミツと砂糖をふりかけて、冷蔵庫で冷やしたような甘さ涼しさ、これぞ吉松節。
 中間部では夢のように美しい鳥のさえずりが聞かれます。ナマで聴いたら寝ちゃうかも。(ほめてます)

第4楽章:祝祭的なファンファーレで始まり、ロックのビートで駆け抜ける錯乱した舞踏としてのフィナーレ。夢の収斂と昇華。
 第2楽章がジャズならフィナーレはロック。 イケイケドンドン、もう勝手にやってくださいなの大騒ぎ。
 ナマで聴いたらさぞやかましいことでしょう。 のれます。 ビート利きまくりです。
 「運命の動機」で恥ずかしげもなく盛り上げに盛り上げたあと、落ち着いたハ長調の和音で終わります。


・・・さて、同時収録の2曲について簡単にコメント。
「アトム・ハーツ・クラブ組曲第2番」は、70年代ロックと、鉄腕アトムへのオマージュとして書かれた弦楽合奏曲。
ラストではあの「アトムのテーマ」も顔を出す、楽しい曲です。
そういえば、吉松さんは現在放送中のアニメ「鉄腕アトム」の音楽を担当されてます(見てない!見なくちゃ)

「鳥たちの祝祭への前奏曲」は、「21世紀の到来を祝福するプレリュード」として作られた10分ほどの曲。
日の出のような雄大なファンファーレに鳥のさえずりがからみます。
テーマはそのまま「NHK大河ドラマ」に使えそうなくらいなので安心して聴けます。

「どこを聴いても吉松印」とばかり、手堅く仕上げられた作品集。
ただ初めて吉松隆を聴かれるのなら、
「交響曲第2番<地球にて>」、「ギター協奏曲<ペガサス・エフェクト>」などをおさめた Chandos9438
をおすすめします。

最後にひとつ偉そうなことを言わせていただくと、どれも良い曲ですが、すべて今までの吉松氏の作品世界の中に綺麗におさまる曲ばかり。 
意外性はありません。
ファンとしては、そろそろ新しい展開を期待したいところですが・・・。

(03.6.25.記)    


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