吉松隆/プレイアデス舞曲集
(田部京子:ピアノ 1996&2001)

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毎年1月にチェロの弦を替えることにしています。
弦の張り替え間隔は、弦楽器弾きにとって永遠の問題。
雑誌「サラサーテ 2018年2月号」に、ちょうど弦張り替えの記事があって、
プロの演奏家の方が「2週間に1回」(!)とか「2か月に1回」とか語っておられます。
すごいなあ、私は年に1回です・・・・・・まあ1日30分くらいしか弾かないしね(しかも昨日はサボった)。

正直言うと、昨年10月ごろから「なんか弾きにくいな〜」「引っかかるな〜」とは思っていたのですが、
4本全部張り替えると2万円くらいかかるので、年が明けるまで我慢して、本日満を持して張替えを敢行!

作業中BGMに選んだのは、吉松隆「プレイアデス舞曲集」(1986〜2001)。
ピアノは田部京子、ながらく愛聴しているCDです。

7曲からなる組曲が、Tから\まで、全部で9つあります。
1枚目のCDには、最初の5つの組曲(計35曲)が収録されています。
曲数は多いですが、1曲2分程度、ファンタジックでロマンティックでいろどり豊か。
1曲1曲が凝縮された小宇宙のよう、俳句や和歌にも通じる短さです。


 プレイアデスの7つの星たち、虹の7つの色、いろいろな旋法の7つの音、3拍子から9拍子までの7つのリズム、などを素材にした
 「現代ピアノのための新しい形をした前奏曲集」への試み。
 バッハの「インヴェンション」あたりを偏光プリズムを通して現代に投影した練習曲集でもあり、
 古代から未来に至る幻想四次空間の架空舞曲を採譜した楽曲集でもあり、点と線だけでできた最小の舞踏組曲でもある。
 全7曲で1巻をなし、1巻の演奏時間はそれぞれ約10分ほど。             
  (吉松隆 プレイアデス舞曲集 I II IIa 序文より)


・・・作曲者はいろいろ能書きを垂れていますが、とにかく聴いてみましょう!
各曲には詩的なタイトルがついています。

 プレイアデス舞曲集T・第3曲「アップル・シード・ダンス」 (変拍子がチャーミングなお洒落なダンス)
 (このCDの演奏ではありません)

 プレイアデス舞曲集V・第1曲「さりげない前奏曲」 (地平線から朝日が昇り、世界がゆっくり光を浴びてゆく様子を連想)
 (このCDの演奏ではありません)

 プレイアデス舞曲集X・第5曲「夕暮れのアラベスク」 (夕日が沈み、星が一つまた一つと瞬きはじめる・・・)
 (このCDの演奏ではありません)

麗しいですね〜。
聴いていると感覚が研ぎ澄まされるような気持ちになり、張り替えに集中できます。
あたたかい音の繭に包み込まれているような気持ちにもなり、安心して気分よく作業できます。
どの曲にもひらめきに満ちた響き、デリケートなリズムの遊戯があり、飽きません。
第1集に収録された「プレイアデス舞曲集 T〜X」は変拍子や凝ったリズムに趣向を凝らした「仕掛け」のある曲が多い印象です。

「プレイアデス舞曲集 Y〜\」を収録した2枚目はむしろシンプルで、メロディの美しさやストレートな抒情が魅力的な曲が多い印象(あくまで印象です)。
これらは田部京子のピアノに魅了された作曲者が第1集録音後に田部のために書いたもの。
まず最初に収められた「4つの小さな夢の歌」が最高にビューティフルです(厳密には「プレイアデス舞曲」ではありませんが)。

 4つの小さな夢の歌 より 「春:5月の夢の歌」 (子供のころにどこかで聴いた懐かしい歌のような・・・)
 (このCDの演奏ではありません)

シンプルで美しい、どこか懐かしいメロディ、歌詞をつけて歌いたくなります。

そして田部京子の繊細なタッチは、この曲集にぴったり。
音に寄り添って抒情をたどり、柔かい情感をオーラのように発散します。
あらぬ彼方から聴こえてくる、夢の音のようです。

 プレイアデス舞曲集Y (全曲) (楽譜を見ながら聴くとさらに面白いです)
 

なお、おかげさまで、チェロの弦は無事に張り替えることができました。
弾いてみると、おお、弓運びがスムーズだ!
やっぱり古くなっていたんだな〜、こりゃ弾きやすいわ。
半年に1回くらい変えたほうがいいのかもしれません。

来月は弓毛を替える予定です。
毛替えの間隔も、弦楽器弾きにとって大きな問題でありますが(プロは毎月替える人も)、もう一年替えてないから、そろそろ限界でしょう。
そういえばピアノの調律も3年くらいやっていないな・・・。


 「3つのワルツ」より「緑のワルツ」 (抒情的なワルツ、可憐の極致)
 (このCDの演奏ではありません)


(2018.01.09.)

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