シャルパンティエ/聖水曜日のための3つのルソン・ド・テネブレ
(コンチェルト・ヴォカーレ 1982年)
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朝夕めっきり冷え込むようになってまいりました。
寒くなると恋しいのが、サルパンティーじゃなかったシャルパンティエの声楽曲。
ほっこりした温かい音の毛布に包まれたくなります。
マルカントワーヌ・シャルパンティエ(1643〜1704)は17世紀フランスの作曲家。
同じ時期に活躍したジャン・バティスト・リュリが国王のお気に入りとなり宮廷に食い込み、ライバル作曲家を排除したため、
シャルパンティエは宮廷では活躍できず、主に教会音楽の分野で作品を残しました。
とくに「ルソン・ド・テネブレ」を数多く作曲、その数32曲と言われます。
これは、ルソン助左衛門の物語を音楽にしたもの・・・ではなくて、旧約聖書のエレミア哀歌を歌詞に持つ声楽曲。
カトリック聖週間の典礼で歌われ、水曜日・木曜日・金曜日の三日分でワンセット。
シンプルな器楽伴奏をバックに静かにやさしく歌われる音楽は、17世紀フランスで流行しました。
シャルパンティエ以外では、クープラン、ドラランド、ランベールなどの曲が有名です。
「ルソン・ド・テネブレ」とは「暗闇のお勤め」という意味。
典礼は深夜に行われ、ワンフレーズ歌うごとに13本のロウソクを順に消していって、最後に暗闇になることからそう呼ばれます。
全部消したらお化けが出てくるって寸法ですね(←それは「百物語」)。
クープラン:ルソン・ド・テネブレから第3曲 (0分35秒と2分30秒あたりでロウソクを消します)
私はキリスト教には詳しくなく、ていうか「一神教こえ〜」と思っている人間。
信じているのは「苦時頼神教 (くじらいしんきょう)」くらいであり、「ルソン・ド・テネブレ」のこともよくわかりませんが、
それでも純粋に音楽を楽しむには問題はない、たぶんないと思う、ないんじゃないかな。
コンチェルト・ヴォカーレによる「シャルパンティエのルソン・ド・テネブレ」のCDは、
シャルパンティエのルソンの魅力を一般の音楽ファンに知らしめた名盤。
30数年前の録音ながら、抑制のきいた優美さ、洗練をきわめた気品ある解釈は、いま聴いてもじつに素晴らしいです。
とくに、ソプラノ独唱による第2曲、二重唱で歌われる第3曲が好きです。
なんというかじつに暖かい音楽なのです。
もちろん、聖木曜日、聖金曜日のCDも出ています。
シャルパンティエ/聖水曜日のためのルソン・ド・テネブレ 第1 より
シャルパンティエ/聖水曜日のためのルソン・ド・テネブレ 第3
なお当時フランスで「ルソン」が流行したのには裏の事情もあるそうで、じつは聖週間には娯楽音楽が禁止されていたんだとか。
なので仕事のない劇場の歌手が教会で「ルソン」をこぞって歌い、信者というか聴衆も喜んで聴いたんだそうです。
そういう需要があったからシャルパンティエもたくさん書いたんでしょうね。
(2016.10.30.)
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