F・クープラン、ドラランド/ルソン・ド・テネブレ
(エマ・カークビー、アニュス・メロン:ソプラノ 2005年録音)
Amazon.co.jp : Couperin, Lalande: Lecons de Tenebres
10月4日は、上の娘(中2)の学校のクラス対抗合唱コンクールでした。
公立中学ですが、音楽教育がさかんなようです。
ひとクラスずつ全員壇上に上がり、自由曲1曲を歌います。
父兄もたくさん詰めかけて、賑やかです。
始まりました。
・・・こ、この歌声は・・・!
・・・ひどい・・・
うーむ、みんな一所懸命歌っているようですが、
残念ながらお世辞にも上手とは・・・。
まあ、クラスでまとまって歌うことに意味があるみたいですね。
娘のクラスが歌い終わるのを待って退散しました。
家に帰って耳直し、
フランソワ・クープラン(1668〜1733)「ルソン・ド・テネブレ」でも聴きましょう。
17〜18世紀のフランスでは、キリストの受難をいたむ聖週間に、
旧約聖書の「エレミアの哀歌」を朗唱する習慣がありました。
その音楽が「ルソン・ド・テネブレ」。
多くの作曲家が作品を残していますが、
最高傑作と言われるのが、F・クープランのもの。
ソプラノ独唱(一部は二重唱)+通奏低音のみのシンプルな響き。
きわめて抑制の効いた音楽ですが、なんという流麗さと洗練。
天国でBGMを流すとしたらこれですね絶対。
誰ですか「帰ってきたヨッパライ」がいいとか言ってるのは(古ぅ)。
当時、パリ郊外のロンシャン女子修道院で名だたる歌手によって歌われ、
人々は争って聴きにいったそう。
ミサは夜に行われ、15本のろうそくを立てて歌いはじめられます。
休止するたびに1本ずつ吹き消されてゆき、最後は真暗闇に・・・。
まあ、百物語みたいなものですな(←違う)。
1991年のフランス映画「めぐり逢う朝」で効果的に使われていたのも印象的です。
映画「めぐり逢う朝」からクープラン:ルソン・ド・テネブレのシーン
カウンターテナーのジェラール・レーヌが歌ったCD(Harmonic)が、
中性的妖しさをたたえながらも、神秘的かつ真摯で大変素晴らしいのですが、
残念ながら現在入手不能のようです。
というわけで、いっそ最新録音のカークビー、メロン盤を(上の写真)。
古楽界を代表するふたりの名ソプラノの競演。
女性らしさを前面に押し出した、たおやかでしなやかな歌唱です。
随所に官能的な響きを聴かせてくれまして、
とくに第3曲・二重唱での声のとろけあいは、まさにふたりの天使。
なおこのCDは余白に、ドラランド(1657〜1726)のルソン・ド・テネブレの抜粋を収録しています。
こちらもしっとりとした名曲です。
全編、静謐な祈りのうたに満ち満ちたアルバムであります。
不信心者の私は単に「キレイだな〜」と聴いてるだけですが。。。
柔らかな音に包まれてまったりほっこり、気持ち良いのであります。
(08.10.6.)
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