映画「めぐり逢う朝」サウンドトラック
(ジョルディ・サヴァールほか、 Alia Vox AV 9821)
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サント=コロンブに入門を志願するマレ
「めぐり逢う朝」は、1991年のフランス映画です。
舞台は17世紀のパリ。
ヴィオールの名手でありながら、亡き妻と神のためにしか演奏しようとしないサント=コロンブと、
音楽を手段として宮廷での栄達を目指している弟子マラン・マレ。
マレは師から破門を言い渡されますが、彼を愛するサント=コロンブの娘は、父の演奏の秘術をひそかにマレに伝えつづけます。
しかし彼女の愛には悲しい結末が待っていました・・・・。
映像がとても美しく、全編にヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)の音色が流れる、落ちついた味わいの一編でした。
この映画の音楽を担当したのが、名ヴィオール奏者ジョルディ・サヴァールで、サウンドトラック・アルバムはフランスで大ヒット。
今回、デジタル・リマスターされて、サヴァール個人のレーベル "ALIA VOX" から再発売されました。
AlLIA VOX のサンプラーCDもついていて、たいへんお得になっています(実質的に2枚組)。
さて内容は、マレの作品を中心とする、ヴィオール名曲集の趣。
ヴィオールのあのしぶ〜い音が好きな私などは、うれしくなってしまいます。
ほかにもサヴァール夫人であるモンセラート・フィゲーラスが美声を聴かせてくれるクープラン「ルソン・ド・テネブレ」の一節や、
トラディショナル・ソングも含まれ、変化に富んで飽かせません。
美しい娘(トラディショナル)
また最後のトラックは、バロック・ヴァイオリンの第一人者ファビオ・ビオンディが弾くマレの名曲「聖ジェネヴィエーヴ・デュ・モンの鐘」。 熱のこもった演奏、素晴らしいです。
オマケのサンプラーには、マレの「ラ・フォリア」「人間の声」のほかに、リュリの作品なども収録されているので、
この2枚で、17世紀フランス宮廷音楽の優雅な雰囲気にたっぷりひたれます。
さて映画の中では師匠の娘を手玉に取る悪役だったマラン・マレ君(でもなかなか魅力的に描かれていた)、実際はどんな人物だったかといいますと、
1656年、貧しい靴屋の家に生まれ、聖歌隊を経て、10代の後半にサント=コロンブに師事します。
その後、宮廷音楽界のドンであったリュリの知遇を得て、20歳で歌劇「アティス」の初演に参加。
あとはとんとん拍子に出世し、オペラ座の終身指揮者にのぼりつめ、1728年に亡くなります。
ただしリュリ風のオペラ・バレはあまり書かず、サント=コロンブを継承するような典雅なヴィオール作品をたくさん残していますから、
実はサント=コロンブのことを終生の師とあおいでいたのかも知れません(この映画を見たら怒るぞ、きっと)。
破門されたという事実もなさそうですし・・・
あ、でもとても良い映画です。音楽好きなら一見の価値あり (フォローになってるかな)。
(02.11.17.記)
追記:2011年、「めぐり逢う朝」のDVDが発売されました! → コチラ
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