映画「めぐり逢う朝」
(1991)




Amazon.co.jp : めぐり逢う朝  HDニューマスター版 [DVD]

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Tower@jp : めぐり逢う朝 HDニューマスター版


「ぐっふっふっ、紀伊国屋よ・・・」

「何でございますか、お代官さま?」

「おぬしも、ワルよ・・・・・じゃなかった、ありがとうございまーす!


いやー、もう紀伊国屋書店サマには足を向けて寝られない今日このごろでございます。
昨年末に、フランチェスコ・ロジー監督オペラ映画「カルメン」のDVDリリースに大喜びした私ですが、
今度はアラン・コルノー監督の名作「めぐり逢う朝」を出してくれたではありませんかっ!
(コルノー監督は2010年8月に死去されました)

この映画、サウンドトラックCDも素晴らしいですが、
やはり本編の味わいは格別なものがあります。


 時は17世紀後半のフランス。
 サント=コロンブは天才的なヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)奏者。
 しかし、妻を亡くしてからは、ふたりの娘とともに田舎に隠棲、
 宮廷からの招きには耳を貸さず、ひたすら音楽に身を捧げます。
 音楽を手段として宮廷での栄達を望む弟子のマラン・マレは、師から破門されますが
 彼を愛するサント=コロンブの娘・マドレーヌが、父の演奏の秘術をひそかにマレに伝えます。
 しかし彼女の愛には悲しい結末が・・・・。

 「めぐり逢う朝」より、サント=コロンブに入門を志願するマレ
 

ゆっくりとしたテンポで展開するストーリー。
俳優たちの演技も素晴らしいというか、何気ないまでに自然で、
現代人が演じているのではなく、350年前にタイム・トラベルして撮影したんじゃないかという錯覚に陥るほど。
そして光と影が交錯する繊細な映像。
戸外のシーンはどこをとってもコローの絵画のようです。

サント=コロンブ氏の偏屈&頑固ぶりには、ちょっとイラッと来ますけれど、
音楽の神髄、芸術の本質を追求してやまない孤高の生き方には圧倒されます。
しかしこんな親を持ったら大変だ・・・。

若き日のマラン・マレを演じるギヨーム・ドパルデューは、このとき20歳。
危険な香りただよう美青年ぶりは、輝くばかり。
惜しくも2008年に37歳の若さで亡くなった、悲劇の名優です。

マドレーヌ役アンヌ・ブロシェもいいなあ。
白磁の陶器のような透明感、こわれそうなはかなさに胸キュン(←死語)です。


そして、ヴィオラ・ダ・ガンバ(ヴィオール)という楽器自体の美しさ!
チェロをふくよかにしたような独特のフォルム。
7本の弦を張った幅の広い指板の綺麗なこと。
また、全編に流れるヴィオラ・ダ・ガンバの音色!
人の声を模したと言われる、ハスキーで深みのある音に魅了されます。
ヴィオラ・ダ・ガンバこそこの映画の真の主役かもしれません。

実に格調高い、美しい映画です。
とくにバロック音楽好きは必見!
観るとヴィオラ・ダ・ガンバが弾きたくなります、欲しくなります(←アブナイ)
でもアマゾンでも楽天でも売ってませんでした(←ホッ)
しかしなんと、チェロは売ってました!(ビックリ)


なおサント=コロンブは実在の人物ながら、その生涯はほとんど不明。
なのでこのストーリーはあくまでもフィクションです。

 
「めぐり逢う朝」からクープラン:ルソン・ド・テネブレ
 

(11.2.22.)






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