マレ/ヴィオール曲集第3巻より
ジョルディ・サヴァール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)、トン・コープマン(クラヴサン)
ホプキンソン・スミス(テオルボ)
1992年録音



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疲れると、無性にガンバが聴きたくなります。
ガンバといっても、サッカーのチームではございません。

ヴィオラ・ダ・ガンバ(ヴィオール)、バロック期に流行した6弦の楽器。
音はチェロに似ていますが、より渋くて、滋味があります。 しみます。 落ち着きます。
高音は柔らかく、中音域はなぐさめるよう。
でも低音は太くてしゃがれ気味、声優で言うと森山周一郎さんのようです(わかる人はトシかも)。
間違っても、広川太一郎さんのようなスットンキョウな音ではなかったりなんかしちゃうのです、なんてね。

マラン・マレ(1656〜1728)は、演奏・作曲両面でヴィオラ・ダ・ガンバ最大の巨匠と言われる偉い人。
かつてはマレにしか耳にできないマイナー作曲家でしたが、「めぐり逢う朝」(1991)というフランス映画で有名になり、CDもどんどん録音されてます。
昨年(2006年)は生誕350年でしたし。

現代の名手・ジョルディ・サヴァールは、「めぐり逢う朝」でブームになる以前に、マレのヴィオール曲集のディスクを5枚録音していました。
どれも素晴らしいのですが、肩のこらない小品を集めた第3集が、気軽に聴けて一番好きかなあ。
最初の「プレリュード」を聴いたときに感じる、ぬるめの風呂につかって手足を伸ばした瞬間のような心地よい脱力感。
トラック12「ラ・ブリヤント」のような、華麗な舞曲風の曲もあります。
低い音量で流しながらウトウトすると、至福の一時間が過ごせます。

 ラ・ブリヤント
 


ちょっと重めの曲が収められた第2集も素晴らしいです。
フォリア主題と31の変奏からなる、18分におよぶ「スペインのフォリア」は、バッハの「シャコンヌ」とタメを張れる名曲。

 

そして上司だったリュリの死に捧げた「リュリ氏のトンボー(哀悼曲)」の深い慟哭の響き。
リュリといえば、女たらしで男色家で策略家で権力志向で、とんでもない人だったらしいのですが、
マレはリュリに目をかけられていたようで、これ聴くと、どうやら本気で死を悼んでますね。

 

ただし残念ながらこのシリーズ、現在入手困難のよう。
名盤なので、いずれ再発されるといいなあ。

(07.4.26.)

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