ブラームス/後期ピアノ曲集
(ヴァレリー・アファナシエフ 1992録音)



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私、来年定年なんですが・・・。

奇妙なことに気づいてしまったのです。

職場の廊下が年々長くなっているのです。
以前は1分歩けば着いた別の部署まで、こないだ2分近くかかりました。
そういえば階段の段数も徐々に増えているようです。
1階から3階に上がるとき、昔の倍くらい疲れます。
あとスマホの文字は年々小さくなっていくし、ビールのアルコール度数も知らないうちに上がったのかすぐに酔っぱらうようになりました。
気味が悪いですねえ・・・。

そして最近、「ブラームスの後期ピアノ曲って、いいなあ」と、しみじみ思うようになりました。
昔聴いたときは、なんか辛気臭い音楽やな〜としか思わなかったのに。
ブラームスもしばらく聴いてないうちにヴァージョンアップでもしたんでしょうか。

 3つの間奏曲 作品117 第2曲 (落葉がひらひらと舞い落ちるような優美な寂しさ)
 

ヨハネス・ブラームス(1833〜97)は、大ピアニストのクララ・シューマンと親密で、自分自身もピアノの名手でしたが、
なぜかピアノ独奏曲はあまり書きませんでした。

しかし1892年(59歳)の夏、避暑地バド・イシュルに滞在中、立て続けに20曲のピアノ曲を書きました。
すべて数分の小品で、技巧をひけらかすところはなく、静かで地味な曲ばかり。
これらは作品116から119までの4つの曲集に分けて出版されました。
各曲にはタイトルがついていますが、20曲中14曲が「間奏曲」です・・・やる気あるんかい!
出版社のジムロックに宛てた手紙には ”Wissen Sie einen Titel??!!??!?” (タイトルわかります??)とあります。
ビックリマークとクエスチョンマークの使い方がお茶目です。

 6つの小品 作品118 第6曲 間奏曲 (雪景色の中をひとり歩んでいるような・・・)
 

これらの作品は誰にも(クララにも)献呈されていません。
老境に達したブラームスが(当時の59歳は老人)、心の赴くまま、独り言のように綴った音の日記です。
筆舌に尽くしがたい傑作ぞろいですが、聴きこみすぎると出家したくなりそうなのでほどほどにしておくのが吉かも。

 4つの小品 作品119 第1曲 間奏曲 (クララ・シューマンはこの曲を「灰色の真珠」と形容しました))
 

いやあ〜、沁みますねえ。
高度な作曲技法が隠し味のように効いていて、静かでシンプルな音楽ながら、何度聴いても飽きない深みがあるんだそうです。
濃い煎茶などすすりながら聴いてると、明日にでも退職して引退したくなります。

演奏はなんと言ってもヴァシリー・アファナシエフ
暗くて重くて辛気臭い曲を弾かせたら右に出るものはいない巨匠です。

(2025.01.11.)


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