ドビュッシー/ピアノ独奏曲集成(4枚組)
(安川加壽子 1969〜71録音)




Amazon.co.jp : ドビュッシー生誕150周年特別企画 安川加壽子/ドビュッシー:ピアノ独奏曲集成

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日本人ならドビュッシーはこれを聴こう!



はるか昔の1970年代。
いたいけで純真な少年の私はクラシック音楽を聴きはじめたばかり。
うまいこと親をだまくらかして「レコード芸術」なる雑誌を毎月買ってもらえるように仕向け(←どこがいたいけで純真や!)
隅から隅まで舐めるように読みました。
あのころ舐めるように読むものを間違えたおかげで現在の体たらくがあるわけですが、それはまた別の話。

「レコード芸術」では、定期的に「名曲名盤」という企画がありました。
さまざまな名曲について、複数の音楽評論家がお気に入りの盤を推薦、得票数でその曲の「名盤」を決定するもの。
要するにランキングです。

そのなかで1970年代のドビュッシーのピアノ曲のランキングでは、
ギーゼキング、コルトー、フランソワといった巨匠にまじって、安川加壽子という名前があちこちに登場していました。
現物がないので確証はありませんが、1位にランクされた曲もあったような・・・。

 しかも無情にも「廃盤」と記されて。

「廃盤」のLP(まだCDはなかった)を推薦されてもなあー、と思ったことを覚えています。
まあどっちみち当時は1枚1000円の廉価盤しか買えませんでしたが。


時は流れて21世紀、青柳いづみこ「翼のはえた指―評伝 安川加壽子」 」という本を読みました。

 安川加壽子(1922〜1996)

 1922年、兵庫県生まれ。
 1歳のとき、外交官であった父の仕事のため一家でフランスに渡る。
 3歳でピアノを始め、10歳で国立パリ音楽院に入学。
 1937年、15歳で国立パリ高等音楽院を首席で卒業、ピアニストとして演奏活動を開始。
 第二次世界大戦勃発のため1939年に帰国、その後は日本国内で演奏活動のかたわら東京芸大の教授として数多くの後進を育成。
 戦後日本ピアノ界の頂点に君臨し、音楽界を引っ張った、超偉大なお方だったのでありまするよ控えおろう!


ところが演奏を聴いてみようにも安川加壽子の音盤はほとんど入手困難、ドビュッシーにいたってはCD化もされていませんでした。

すっかりあきらめていたのですが、2006年に「安川加壽子:ドビュッシーピアノ独奏曲集成」なる4枚組がビクターから発売されるという情報が!
お値段も6000円と、当時としては良心的。

 「これは早めに買っておかないと、品切れになるぜ!」

と直感し、予約して買いました。
案の定、1年くらいで品切れ廃盤となり、「ふっふっふっ、思ったとおりだ・・・・」 とほくそ笑む腹黒い私。

しかし悪いことはできないもの(?)、今年2012年ドビュッシー生誕150年を記念し3800円に値下げして再発売されたではありましぇんかーマイケルシェンカー!
ちなみに安川加壽子生誕90年でもあります。

安川加壽子のドビュッシーは、ちょっと聴くと中庸で大人しい演奏に聴こえますが、もちろん柔和なだけの甘い演奏ではありません。
知的で格調高く、濃厚な浪漫性を漂わせ、理屈っぽさはないけれども、どこまでも明快。

 「これがわたくしのドビュッシーよ、いかがかしら」

と言わんばかりの矜持と確信に満ちた、完成された音楽世界。

たとえば、1枚目に収められた「12の練習曲」
ひとつ間違えると機械的で無味乾燥になりかねないこの曲を、知的かつロマンティックに構成して退屈させません。
随所に漂う上品なユーモアもエスプリたっぷり、この曲に関しては、もうほかの演奏を聴く気がしないほどです。
「前奏曲集」でも、明晰でありながら詩情もたっぷりという、ドビュッシー演奏の理想が綺麗に音になっています。

王道ど真ん中、ドビュッシーのスタンダード、いつまでも古びない名録音だと思います。
「さすがはフランスがえり・・・」と、言いたくなりますが、ご本人は「わたくしのドビュッシーは日本で戦後、究めたもの」と自負していたそう。

 日本人ならドビュッシーはこれを聴こう!

と、特筆大書したい名盤です。

(2012.11.4.)

 「ベルガマスク組曲」より「プレリュード」(安川加壽子の演奏ではありません)
 

 「版画」より「雨の庭」(安川加壽子の演奏ではありません)
 


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