ドビュッシー/3つのソナタ 神聖な舞曲と世俗的な舞曲
(L.ラスキーヌ:ハープ、J.P.ランパル:フルート、P.トルトゥリエ:チェロ ほか)
(1962年録音)



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親分:今年2018年は、クロード・ドビュッシー(1862〜1918)没後100年なんだな。

ガラッ八:へーえ、ビュッシー死んではや100年ですか。

親分:ビュッシーって・・・ラッシーとかキョンシーみたいに呼ぶのやめてあげて! おまえ友達か親戚かよ。

ガラッ八:大腸がんのため、人工肛門増設手術を受けた最初の作曲家として有名なドビュッシーでやんすね。

親分:いや他にも有名ポイントあるから、そんな消化器外科医だけが喜びそうなトリビアじゃなくて。

ガラッ八:最初と2番目の同棲相手が二人とも、ドビュッシーの浮気が原因でピストル自殺を図ったことで有名なドビュッシーですね

親分:ダメンズとして折り紙つきなことは認めるよ!
   しかし、天才作曲家であることは誰にも否定できない。
   晩年に作曲された3つのソナタをまとめたこのアルバムを聴けば、一聴瞭然だ。

ガラッ八:親分が100年前から聴きこんでる名盤ですね。

親分:いやこれ録音1962年だし、ていうか俺は不老不死かよ!

ガラッ八:いえ、ただの不良中年ですが。

親分:ほっといてくれ。

ガラッ八:3つのソナタと言いながら、最初に収められているのは「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」(1904)ですね。

親分:凝ったタイトルのせいでかえって敬遠されがちな曲だが、要するに「弦楽合奏とハープのための協奏曲」だよな、これ。

 

親分:ゆっくりとした「神聖な舞曲」と、活発な「世俗的な舞曲」の2部分からなる曲だ。

ガラッ八:そうはいっても曖昧模糊として、どこから「世俗的な舞曲」なのかよくわからないでやんす。

親分:リリー・ラスキーヌ盤は録音の古さもあって、さらに一枚ヴェールがかかったような響き。
   だが、それがいい。 かえって優美で色彩的な印象を受けるほどだ。

ガラッ八:いかにもドビュッシーって感じの、もわーっとした曲ですね。

親分:続く、フルート・ヴィオラ・ハープのためのソナタ(1915)は、ドビュッシーの室内楽分野での最高傑作じゃないかと思うな。
   なにより楽器編成が素晴らしい、この組み合わせを思いつくなんざ、まさしく天才だよな。

 第1楽章
 

親分:冒頭、ハープに導かれてフルートが奏でるメロディが循環主題となり、全曲のいたるところに顔を出す。
   あらぬ彼方から聴こえてくる清らかな調べというか、俗人の世界から少し離れたところを静かにたゆたうような音楽。
   リリー・ラスキーヌとジャン=ピエール・ランパルの演奏は、この曲の永遠のスタンダードだ。

ガラッ八:つかみどころがないですが、とにかく聴いて気持ち良いでやんすね。

親分:続くチェロ・ソナタ(1915)は演奏時間10分あまりと短いが、逆に言えば無駄な音が一つもない。
  伸びやかな低音、繊細なうた、ジャズのようなピチカート、そしてフィナーレは祭囃子のようなリズムの饗宴。
  誰にも似ていない、ドビュッシー印のハンコがどの小節にも押されているような独創的創造物。

 

親分:ポール・トゥルトリエは芯の太い音でスケールの大きい演奏をするチェリストだが、このCDでは繊細で小粋な表現も巧みに操って、やっぱり巨匠だなー、上手いなー。
   とくにフィナーレの盛り上がりは、ピアノのジャン・ユボーとともに見事な名人芸。

ガラッ八:チェロ・ソナタっていうと退屈な曲が多いイメージですが、この曲は雰囲気がくるくる変わって面白いでやんす、短いのもいいですね。

親分:そしてヴァイオリン・ソナタ(1917)は、作曲者最後の作品。
   ドビュッシーは、様々な楽器のための6つのソナタを書くつもりでいたんだが、3曲書いたところで命がつきてしまった。

ガラッ八:ちょっと残念でやんすね、あと1〜2年長生きしていればもっと名曲が生まれていたかもしれないと思うと。

親分:第1楽章はどこかスペイン風というか、エキゾティックな雰囲気。
   第2楽章はグロテスクな諧謔性が面白い、気まぐれなスケルツォ。
   第3楽章は第1楽章の主題が再び登場する、華やかで明るいフィナーレ、作曲者自身「意に反して歓喜に満ちた」と思わず言ってしまっている。

 

ガラッ八:まあ、最後の作品なんだし、いいじゃないですか賑やかで。

親分:ドビュッシーは、「このソナタは、病気の男が戦争中に書くことの出来る例として、ドキュメンタリー的にも興味深い」とも言っている。

ガラッ八:あ、そういえばこの曲が作曲された頃って第一次世界大戦中ですね。

親分:この3曲、「ソナタ」と銘打ちながら、ただの1楽章もソナタ形式を採用していない。
   理詰めで構築的な「ソナタ形式」は、敵国ドイツの音楽を思わせるので意地でも使わなかったらしい。
   出版された楽譜の扉にはわざわざ「フランスの音楽家、クロード・ドビュッシー作曲」と記したそうだ。

ガラッ八:へえー、意地っ張りというか偏屈ですねー、そういうの嫌いじゃないでやんす。

親分:なお、犬猿の仲だったサン=サーンスも晩年に、様々な楽器のための6つのソナタを計画して、やっぱり3曲書いたところで死んでしまった

ガラッ八:じつは意外と気が合ってたんじゃないすか、このふたり。

(2018.09.06.)


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