ヴァインベルク/チェロ小協奏曲、チェロと管弦楽のための幻想曲、室内交響曲第4番
(ピーター・ウィスペルウェイ:チェロ ジャン・ミシェル・シャルリエ:クラリネット ラファエル・フェイ:指揮 レス・メタモルフォーセズ)



Tower : ヴァインベルク/チェロ小協奏曲



ミェチスワフ・ヴァインベルク(1919〜96)のチェロ小協奏曲の存在は知っていました。
ヴァインベルクの死後に発見された作品で、1948年にわずか4日間で書かれたそうです。
でもこの曲は、同年に完成されロストロポーヴィチにより初演された名曲チェロ協奏曲 作品43の下書き・習作・プロトタイプと言われていて、

 「チェロ協奏曲のCD何種類か持ってるし、別にいいか〜」

とスルーしてたんですよね。

 チェロ協奏曲 作品43 (ソル・ガベッタ独奏によるライブ)
 (20世紀チェロ協奏曲の屈指の名曲です!)

しかし今回、ピーター・ウィスペルウェイが録音すると聞いて興味を惹かれ、つい魔が差してポチッとしちゃいました。
演奏時間は4楽章で16分ほどと、チェロ協奏曲のほぼ半分。
ウィスペルウェイのチェロはさすがに雄弁で、包容力と艶のある音、深い響きと表現力が味わい深いです。
チェロ協奏曲に負けないくらい深みのある曲であったのだなあと感銘を受けましてございます。

収録曲は、

 1. チェロ小協奏曲 Op.43b
 2. チェロとオーケストラのための幻想曲 Op.52
 3. 室内交響曲第4番 Op.153


の3曲。

なお聴いてびっくりおったまげたのですが、このCDに収められた3曲は40数年の時をまたぎつつ、主題が互いに関連しているのです。
こりゃ今まで気が付かなかったな〜。
技ありの組み合わせです。

 チェロ小協奏曲 第1楽章
 

出だしは「チェロ協奏曲」とおんなじですが、その後の展開が簡略です。
まあこれはこれでコンパクトで良いかも。

第2楽章の主題もチェロ協奏曲と同じ。
クレズマー(ユダヤ音楽)っぽい哀愁の旋律です。

 

第3楽章の荒々しいスケルツォ主題も共通ですが、中間部がなく3分少々で思い切りよく終わります。

 第3楽章
 

最も異なるのが第4楽章で、チェロ協奏曲では新しい主題による華やかな展開がありクライマックスで冒頭主題が再登場して、最後は静かに終わるのですが、
小協奏曲ではカデンツァのあと、悲し気に冒頭主題を回想して終わるのみ、盛り上がりません。
うーん、この楽章は全く別の曲だわ。
しかしこの暗さ、辛気臭さ、ヴァインベルクらしくて実に素晴らしいです!(←ちょっと毒されている)

 第4楽章
 

この曲が書かれた1948年は、盟友ショスタコーヴィチがジダーノフ批判でコテンパンにやられるわ、義理の父で俳優のソロモン・ミホエルスはKGBに暗殺されるわで、
ヴァインベルクも粛清の危険を肌で感じていました。
なので彼の本当の心情は小協奏曲のほうに表わされているのかもしれません。


チェロとオーケストラのための幻想曲 Op.52(1953)は、自由な形式による単一楽章の作品。
「チェロ小協奏曲第2番」と呼んでもよいくらい充実した内容の名曲です。
2:00過ぎからのユダヤ風の調べの寂寥感(チェロ小協奏曲の第2楽章の主題にちょっと似ています)。
そして7:18からのアレグロの主題は、チェロ小協奏曲の第3楽章の主題とそっくりです。

 

そしてヴァインベルクは1953年、この曲を完成した直後に、身に覚えのない国家反逆罪で逮捕されてしまいます。
国家反逆罪の場合、良くてシベリア流刑、悪くすると銃殺・・・。
ああ自分もこれまでかと思ったら、2週間後にスターリンが急死!
なぜかあっさり無罪放免になったというから、ある意味運の強い人です。
しかし生きた心地しなかったでしょうな。


弦楽とクラリネットのための室内交響曲第4番 Op.153(1992)は、ヴァインベルクが完成した最後の作品。
独奏クラリネットは荒野をひとりさまよう旅人のよう。
途中つむじ風にあって翻弄されたり、
   ↓
 第2楽章
 

チェロとヴァイオリンが道ずれになってしばらく一緒に旅をしたりします。
チェロのメロディは「チェロ協奏曲」冒頭主題とよく似ています。

 第3楽章
 

しかし気がつけばまたひとりぼっち、漂泊の旅はいつ果てるともなく続くのです・・・。
第4楽章の主題は、「チェロ協奏曲」のスケルツォ主題にどこか似ています。
なんなんでしょうこの関連は?

 第4楽章
 

作曲時、ヴァインベルクは病気に苦しんでおり、これが最後の作品になることがわかっていたかもしれません。
その曲に40年以上前に作曲したチェロ協奏曲を引用する意図は?
「チェロ協奏曲」を献呈し初演したロストロポーヴィチへのなんらかのメッセージでしょうか?
それともこれらはクレズマー音楽としてたまたま雰囲気が共通しているだけ?
今後の研究を待ちたいです。

(2022.07.02.)


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