カルダーラ/四声による12のシンフォニア
(Gunar Letzbor & Ars Antiqua Austria)
(2003年録音)




Amazon.co.jp : Caldara: Xii Sinfonie


 シンフォニア 第1番 《聖テレンツィアーノの殉教》
 シンフォニア 第2番 《洗礼者》
 シンフォニア 第3番 《アベルの死》
 シンフォニア 第4番 《キリストの死と埋葬》
 シンフォニア 第5番 《カエサレアの聖ペテロ》
 シンフォニア 第6番 《苦痛を受けし聖エレナ》
 シンフォニア 第7番 《改宗したエルサレム》
 シンフォニア 第8番 《セデーチャ》
 シンフォニア 第9番 《神殿に現れたイエス》
 シンフォニア 第10番 《夢を説くジョゼッフォ》
 シンフォニア 第11番 《ナボス》
 シンフォニア 第12番 《我らの主、イエスの受難》


アントニオ・カルダーラ(1670?〜1736)のシンフォニア集

カルダーラといえば、「スターバト・マーテル&ミサ・ドロローザ」のCDが超スバラシかったのです。
とくに「ミサ・ドロローザ」は、私の好みのど真ん中に叩き込まれた剛速球でありました。
その作曲家の器楽曲集、これはもう聴くしかないでしょう。

そして演奏は、妖しく揺らぐ青白い炎のような、熱くて濃〜い「ロザリオのソナタ」の録音を行ったグナール・レツボールとくれば、これはやはり聴くしかないでしょう。

カルダーラはヴェネツィア生まれ、若いころはローマで活躍しましたが、1716年にウィーンに移り、皇帝カール6世の宮廷で副楽長をつとめました。
大変な多作家で、2000〜3000曲の作品を書き、ずいぶん活躍したらしいのですが、亡くなったときには何故か多額の借金があったとか(モーツァルトみたいですね)。

「12のシンフォニア」は、1718〜35年に書かれたオラトリオの序曲を集めたもの。
各曲に仰々しいタイトルがついているのはそのためで、タイトルは曲の内容とは関係ありません
いかにもイタリア風な「うた」を感じさせる楽章があるかと思えば、これバッハの「フーガの技法」ですか?と突っ込みたくなるような幾何学的なフーガ楽章があったりして、なかなか変化に富んでおります。

 シンフォニア第1番「聖テレンツィアーノの殉教」より第4楽章(タイトルは悲劇的ですが何やら楽しそうな音楽)
 

 シンフォニア第3番「アベルの死」より第2楽章(バッハ「フーガの技法」を思わせるフーガ。この曲のほうが先だけど))
 

レツボール&アルス・アンティクワ・オーストリアの演奏は、柔らかく落ち着いていて、「ロザリオのソナタ」のレツボールとはずいぶん違います。
年を経て丸くなったのかなこの人。 安心して聴けます。
カルダーラの曲は、職人的安定的手堅的音楽とでもいいますか、これまた安心して聴けます。 
きっちりした仕事でお客様にはご満足いただいております、というところでしょうか。
バロック音楽史上に残る大傑作とか、作曲者の評価を一変させる異色作ではありませんが、
要所要所を押さえた美しい響き、みずみずしいメロディ、巧みな対位法などに感心しているうちに、あっという間に全曲聴き終えてしまいました。

 シンフォニア第10番「夢を説くジョセッフォ」より第1楽章(ミステリアスな主題が魅力的なフーガ)
 

なお、前述の「スターバト・マーテル&ミサ・ドロローザ」のCDは、余白にこのシンフォニアの第6番と第10番を収録しています。

(07.10.8.)

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