カルダーラ/チェロ・ソナタ集
(ガエターノ・ナジッロ:チェロ 2009録音)



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アントニオ・カルダーラ(1670〜1736)と言っても知ってる人はほとんどいないでしょうけど、アントニオ・ヴィヴァルディと同じヴェネツィア生まれの作曲家です。
名前もおんなじアントニオで、ヴィヴァルディより8歳年長です。

若いころはサン・マルコ教会のチェロ奏者を務めましたが、1699年にヴァネツィアを離れマントヴァ、ローマで活躍、
1713年にドイツ皇帝カール6世から直々に招かれウィーンの宮廷楽師となります。

1715年、ウィーンの宮廷楽長マルカントニオ・ジアーニが没すると、
カルダーラは自らを宮廷楽長または副楽長とするようカール6世に請願書を送ります(積極的!野心的!)。
すでに副楽長を務めていたヨハン・ヨーゼフ・フックス(1660〜1741)という人がいたので、フックスが楽長となり、カルダーラは副楽長となりました。
カール6世はフックスを上回る俸給を与えることでカルダーラの面子を保ったといいますから、実力は上だったってことかな。

 「フックスが死んだら次こそ俺が楽長に・・・」と思っていたでしょうが、残念ながら副楽長のままフックスよりも先に死んでしまいました。
 (フックスのほうが10歳も年上なのに)

じっさい、カルダーラは存命中は非常に高名だったそうで、オペラや教会音楽を筆頭に作品の数は3000を超えるそうです。
ヴィヴァルディが死後急速に忘れ去られたのに対し、カルダーラは19世紀末まである程度の名声を保っていたと言われます。


カルダーラは晩年(1735年)に16曲のチェロ・ソナタを書きます。
もともとチェロ奏者だったので自分で弾くために作った・・・のではなく、チェロ愛好家の貴族の依頼らしいです。
このCDにはそのうち8曲が収められています。

 ソナタ第11番ト短調より第4楽章 (哀愁を感じる魅力的なメヌエット)
 

アマチュア向けだからなのかシンプルな曲が多く、それほど技巧的ではありません。
言ってしまえば地味ですが、不思議に退屈しません、聴き飽きません。
音楽のすべてを知り尽くした職人作曲家が自在にイマジネーションを遊ばせた、巨匠の一筆書きのような味わいがあります。

 ソナタ第10番ト長調より第2楽章 (天真爛漫なアレグロ)
 

宮廷で働いていたせいか、ヴィヴァルディのチェロ・ソナタに比べるとロココで優美な雰囲気があります。
その分、刺激成分やケレン味には乏しく、ちょっと耳に残りにくい感は否めませんが。
まあでも、これらの楽章は結構印象的。
     ↓
 ソナタ第4番ニ短調より第3楽章 (うねうねした主題が面白いアレグロ)
 

 ソナタ第14番イ短調より第2楽章 (この楽章はわりと技巧的でわりと盛り上がります)
 

バロック・ソナタ好き、チェロ好きにはとっても楽しめるアルバムです。

(2021.06.01.)


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