ウエストホフ/無伴奏ヴァイオリンのための6つのパルティータ
(Gunar Letzbor 2009録音)
Amazon : Partitas for Solo Violin
重音、重音、ひたすら重音
先日、Gunar Letzborによる、ヴィルスマイヤー/宮廷風の技巧的な調べ(無伴奏ヴァイオリンのための6つのパルティータ)を買ったところアマゾンのオススメに同じLetzborによる
ウエストホフ/無伴奏ヴァイオリンのための6つのパルティータ(1696)
が出てくるようになりまして、
「また無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータかあ・・・」と思いましたが、
なんとなく興味を惹かれポチッとしちゃいました(←Amazonの思う壺)。
ヨハン・パウロ・フォン・ウエストホフ(Johann Paul von westhoff, 1656〜1705)はドイツのヴァイオリニスト兼作曲家で、ビーバーと並び称されたほどの名手だそうです。
ドレスデンの宮廷に勤務したあと1699年にワイマール宮廷楽団の監督に就任しました。
4年後の1703年、ワイマール宮廷楽団にヨハン・セバスチャン・バッハという18歳の青年がヴァイオリニストとして採用されました。
つまりウエストホフはバッハの「ボス」だったわけです。
もっともバッハ君、数か月後にアルンシュタットという街のオルガニストに抜擢され転職してしまいます(バッハ一族のコネと根回しが効いたらしい)。
なおのちにバッハが無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータを作曲する際には、ウエストホフを参考にしたと言われています。
さてバッハにも影響を与えたというウエストホフのパルティータ、どんな音楽でしょうか。
パルティータ第1番・第1曲 アルマンド
静かで落ち着いた音楽です。
ただしよく聴くと単音の部分がほとんど無いことに気がつきます。
ほぼ常に重音が鳴っています。
こりゃ弾くの大変でしょうね。
とにかく全6曲にわたって重音の連続なのです。
細かい音符による華やかなパッセージなどは意図的に排し、「一丁のヴァイオリンで複数のメロディを同時に鳴らす」ことをひたすら追求しています。
なおビーバーが好んだスコルダトゥーラ(変則調弦)は使っていません。
パルティータ第2番・第2曲 クーラント(ほぼすべて重音です)
鮮やかに飛翔するメロディとか、心震える艶っぽい歌はありません。
重音をきれいに鳴らそうとするとフレーズは切れがちになるので、音楽の「流れ」は犠牲になっていると言っても良いほどです。
パルティータ第4番・第1曲 アルマンド(これもほぼひたすら重音)
パルティータなので各曲はいちおう舞曲なのですが、リズムは単調です。
「そんなチャラチャラした音楽には興味はない!」と言わんばかり。
なので一言で言って
地味です。
以前取り上げたヴィルスマイヤー/無伴奏ヴァイオリンのための6つのパルティータのほうが聴いて楽しいのは明らか。
なにしろあっちは「宮廷風の技巧的な調べ」なんてチャラチャラした副題がついてますからね。
しかしウエストホフのストイックさ、ひたむきさ、無口な頑固職人みたいで魅力的です。
たとえて言えばヴィルスマイヤーがパステル画なら、ウェストホフは水墨画でしょうか。
静謐な響きの連なりをじっくりと味わいましょう。
パルティータ第5番・第1曲 アルマンド (この曲なんかメロディアスなほうではないかと・・・やっぱり地味だけど)
聴いているとだんだん心が静まってきます。
お休み前に聴くと、アルファ波がズブズブ出てよく眠れそうです。
(2020.05.10.)
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