サマセット・モーム/聖火(1928)
Somerset Maugham/The Sacred Flame
(行方昭夫・訳 講談社文芸文庫 2017)




Amazon.co.jp : 聖火 (講談社文芸文庫)


第一次大戦後の英国上流家庭。事故で半身不随となりながらも快活にふるまう青年が、ある朝、謎の死を遂げる。
青年の美しい妻、ハンサムな弟、謹厳な母、主治医、看護婦らは、真相を求めて語り合う。
他殺か、自殺か? 動機は? 方法は?
推理ドラマ仕立てで、真の愛とは何か、幸福とは何かを問う傑作戯曲 。


サマセット・モーム(1874〜1965)「聖火」
小説ではありません、戯曲です。

事故で下半身不随となるも明るさを失わない青年が、ベッドの中で死亡。
最初は自然死と思われましたが、不合理な点が見つかり、関係者で話し合ううち、家族の様々な秘密が暴き出されてゆきます。

ミステリとしても、大変面白く読めます。
登場人物はリアルに造形され、感情移入してしまいます、深いです。

真相はまあ予想の範囲内で、ミステリ・ファンにはそれほどの驚きはありませんが、驚くべきはこれが1928年の作品であること。
ヴァン・ダインが「ベンスン殺人事件」でデビューしたのが1926年、
エラリー・クイーンはまだ作品を発表していません(「ローマ帽子の謎」は1929年)。
そんな時期に書かれた本格ミステリ劇、しかも全然古臭くなく、リアリティありありなのですよこれが!
ヴァン・ダインやエラリー・クイーンより人物造形が巧みで血が通ってます、大文豪の筆力恐るべし。
ミステリのためのミステリ、殺人のための殺人ではなく、筋の通った(?)動機があり、読み応えあるドラマとして完成しています。

 モーム先生、あんた凄いよ、最高だよ。

ただしあくまでも「ミステリ仕立ての文学作品」として鑑賞するのが正しい態度でしょう。
本作品には、「真の愛とはなにか?」「幸福とはなにか?」に関するモームの思想が色濃くにじみ出ています。
彼の考え方には、「もろ手を挙げて賛成!」・・・というわけにはいかない気もしますが、
モーム先生のお気持ちはよーくわかりましてございます。

欧米では現在もしばしば上演される傑作戯曲なんだそうで、まともな翻訳がいままで出ていなかったのが不思議なほど。

講談社文芸文庫なので高いですけど・・・
200ページの薄い文庫本が1300円(税別)ですけど・・・
装丁は上品で内容は素晴らしいので、値段だけの価値はあります、たぶんあると思う、あるんじゃないかな?

(2018.04.08.)


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