ミシェル・ルグラン自伝
(ステファン・ルルージュ:共著 高橋明子:訳 アルテスパブリッシング 2015年)


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「大きな成功は何かに”倣って”つくられるものではなく、何かに”反して”つくられる」
(145ページ)

「ミシェル、この台詞と歌の間の移行がぼくたちを縛っている。全部が台詞か、全部が歌の映画を作ろうよ」
「まず全部を歌でやってみよう。全編、歌が台詞に取って代わった長編映画はこれまでに作られたことがない。
もしそれができたら、新しいミュージカルの誕生だ!」

(138ページ)



20世紀フランスを代表する映画音楽作曲家 ミシェル・ルグラン(1932〜)の自伝。
短い章の積み重ねで読みやすく、時代は行ったり来たりしますがわかりやすい巧みな構成、ニヤリとしたりアッと驚くエピソードの連続、
ファンにとっては宝物のような一冊です。

ルグランが、コンセルヴァトワールでナディア・ブーランジェの愛弟子であったことは知られていますが、
彼の口から赤裸々に語られる彼女のなんという偉大で立派で(←同じだろ)怖くて恐ろしいこと(←だから同じじゃ)。
「音楽史上最高の教師」と呼ばれた人の活き活きとした横顔が目に見えるようです。
若いころ彼女から音楽の基礎を徹底的かつ厳格に叩きこまれたおかげで、
後の自由自在・軽妙洒脱・流麗華麗なルグラン芸術が花開いたことがよくわかります。

どうしようもない浮気者でお調子者だった、愛憎相半ばする父親のこと、
盟友ジャック・ドゥミとともに作り上げた「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」制作秘話、
ジャン=リュック・ゴダール「女は女である」 「はなればなれに」などの裏話、
マイルス・デイヴィス、ビル・エヴァンズ、レイ・チャールズらとの交流、
スティーヴ・マックイーン主演「華麗なる賭け」の主題歌「風のささやき」レコーディング時のエピソードなど、綺羅星のような大物がずらずら登場。
「へえ」ボタン連打ものの話が続々飛び出してきて目が回りそう。
最近共演が多いナタリー・デセイに関する言及もあちこちにあります。


 おもいでの夏
 

 風のささやき
 

それにしてもこんなに偉大な人なのに、上から目線ゼロ、偉そうな臭いが全くしません。
ちょっとくらい威張っても罰は当たらないと思うのですが、ひたすら気さくで自然体、ひょうひょうとた人柄が想像されます。

当たり前ですがルグランの音楽をBGMにしながら読むと最高です。
私は下記のふたつのボックス・セットからとっかえひっかえしながら読みました。

(2016.07.09)


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