佐藤賢一/小説フランス革命
1.革命のライオン 2.バスティーユの陥落
(集英社 2008年)
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革命のライオン |
バスティーユの陥落 |
・・・思えば長い間、自分は虐げられてきた。 踏みつけにされてきた。
最下層に落され、かりに自分の力で良いものを手にしても、
富豪どもに奪われ、搾取されてきた。
しかしこのまま黙っていると思ったら大間違いだ。
機会を待つのだ、好機をとらえて、目に物を見せてやるのだ。
奴らを蹴落として、のし上がってやるのだ。
・・・おお、チャンスが巡ってくるのか!? 今なのか?
今こそ立ち上がるときなのか?
「か、革命だ〜!! 『3』が4枚だぞっ!!」
佐藤賢一が全10巻という壮大な構想で描く「小説・フランス革命」の開幕であります。
18世紀末、フランスは国家財政の危機に直面していました。
しかし聖職者(第一身分)や貴族(第二身分)は税金を収めなくても良い特権を持っており、
搾り取られるのは、台頭しはじめたブルジョアジーと一般庶民(第三身分)。
国王ルイ16世は、特権ニ身分から税を取り立てたい気持ちはあるものの、
気が弱くて優柔不断な性格から、側近の貴族に簡単に丸め込まれてしまいます。
しかし人口の9割以上を占めるのは第三身分。
フランス社会には、つねにどろどろした不満が渦を巻いていました。。。
いやあ、面白いんですけどね、
フランス革命というから、「ベルサイユのばら」のような
愛と悲しみの革命絵巻が華麗に展開するのかと思ったら、
のっけから登場するのは「オッサンばかり」であります。
財政改革を試みるも貴族の抵抗に挫折する財務大臣ネッケル、
「ライオン」を自称する改革派にしてむくつけき巨漢ミラボー伯爵、
優柔不断で鈍感な国王ルイ16世。
恋人リュシルとの結婚を彼女の親に認めてもらうため、何とか名を挙げたい弁護士デムーラン。
のちに恐怖政治をしくロベスピエールも、改革への希望に燃える貧しい青年として初々しい姿を見せます。
漢字が多いのに妙に読みやすい「佐藤賢一節」。
劇画のような場面展開、性格付けのはっきりした登場人物たち、
そしてリズムある文章のおかげで、サクサク快調に読めてしまいます。
そもそもフランス革命とはどのようにして始まったのか、
バスティーユ陥落の実態はいかなるものだったのか、
ミラボー伯爵はブオトコなのになぜ女にもてるのか、
読めば納得であります。
デムーランがいきなり革命の英雄に担ぎ上げられ
バスチーユを陥落させてしまう経緯など、あまりに出来すぎていて、
どこまでが事実でどこまでがフィクションなのか
ちょっと眉に唾をつけたくなります、ホントにこんなだったんですか〜?
唯一の女性登場人物といえるのが、デムーランの恋人リュシル・デュプレシ。
彼女が革命の先頭を切るカッコイイシーンで、第2巻は終了となります。
ここへきてはじめて女たちが前面に躍り出たかの感があります。
ルイ16世一家をヴェルサイユ宮殿からパリへ引きずり出したのは
女たちのデモだったのか・・・?(ここも眉に唾つけたいところ)
ミラボー伯いわく、
「女という生き物は、大衆の権化なのだ」(第2巻263ページ)
そうですが。
まるで劇画のように読める「小説・フランス革命」
今後も大注目であります。
(09.2.27.)