佐藤賢一/ハンニバル戦争
(中央公論社 2016)



Amazon.co.jp : ハンニバル戦争


紀元前三世紀、ローマへの復讐に燃えるカルタゴの猛将ハンニバルは、
無謀と思われたアルプス越えを敢行、北方からローマに襲いかかる。
第2次ポエニ戦争の始まりである。
最初は軽く考えていたローマだが、ハンニバルの天才的な戦略の前に敗戦に次ぐ敗戦、戦死者の山を築き、
ついにローマ帝国は存亡の危機にまで追いつめられる。
対ハンニバル戦に三度従軍し三度とも敗走したローマ名門貴族の御曹司スキピオは、
どうすればハンニバルを打ち負かせるのか、悩んで悩んで悩みぬく・・・。


佐藤賢一節全開、ライトなノリで描く第2次ポエニ戦争(スキピオ視点)




「ハンニバル」といえば、.トマス・ハリスの小説(のちに映画化)「羊たちの沈黙」に登場する、
ハンニバル・レクター博士のほうが今では有名かもしれませんが、
こちらのハンニバル・バルカは2200年前にチョーものすごいことをやらかした実在の人物です。


第1次ポエニ戦争(B.C.264〜B.C.241)でローマに打ち負かされた北アフリカの大国カルタゴ
紀元前219年、ローマへの復讐に燃えるカルタゴの将軍ハンニバル・バルカは大軍を率い、スペインからピレネーとアルプスを越え、
なんと北方からイタリアに攻め入ります。
これが第2次ポエニ戦争(B.C.219〜B.C.201)、別名ハンニバル戦争
天才的な戦略で次々にローマ軍を打ち破るハンニバルは、結局20年近くもイタリア半島に居座り、ローマ側は数十万人の犠牲者を出します。

この戦争を、最終的にハンニバルを打ち破ることになるローマ将軍・スキピオの視点から描いたのが、
歴史小説家・佐藤賢一の新作、「ハンニバル戦争」

 期待通りでした!

何がって・・・・・・軽く読めるのです!
あ、悪い意味ではありません、歴史の流れをきちんと押さえながら、読みやすくて面白い。
さすがは佐藤賢一
戦闘シーンも、「中の人」視点なので、雰囲気と臨場感があります。
徹底的にスキピオ側から描かれ、ハンニバル自身はラスト近くまで登場しないので、かえって謎めいた強さが強調されます。

ハンニバル来襲時には17歳の青年だったスキピオは、最初は世間を舐めてるお坊ちゃま風に描かれます(史実は不明)。
しかしハンニバル軍にやられては命拾いを繰り返すうちに、ハンニバルの天才的な戦略を詳細に研究するようになり、
直接会ったこともない敵将をいわば教師として、偉大な軍略家へと成長してゆくのです。

思うにハンニバルの真の凄さは、敵地で20年近く戦いながら、ついぞ部下に裏切られたり離反されたりしなかったこと。
どれほど慕われていたんだろう・・・・・・なんというカリスマ、神のごとき人心掌握術です。
対するスキピオも、26歳の若さで自ら立候補して将軍の座につきます(当時ローマでは40歳以下の将軍など考えられなかった)。
この若さで歴戦の古参兵たちを束ね動かすのですから、こちらもカリスマ性、半端じゃありません。
私もいちおう職場では部下を持つ身、二人の爪の垢でも煎じて飲みたいです・・・・・・。

読後、塩野七生「ローマ人の物語」「ハンニバル戦記」をモーレツに読み返したくなって、ただいま読書中。
こちらはほぼ歴史書ながら、塩野七生の練達の筆でハンニバルとローマの死闘を詳細に描いて面白さMAX。
文庫で全3冊なので量的にも読みごたえたっぷり。
気分はすっかり古代ローマです。

それにしても2200年も前の出来事が、これほど詳細に記録されているとは・・・。
ローマ帝国の文化水準の高さをひしひしと感じます。

(2016.3.9.)


ハンニバル戦記(上) ハンニバル戦記(中) ハンニバル戦記(下)


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