佐藤賢一/女信長
(毎日新聞社 2006年)



Amazon.co.jp : 女信長


佐藤賢一さん、初の日本史物です。

 しかし「織田信長はじつは女だった」と言われてもねえー。
 さぞかし無理矢理な話なんだろうなあ。
 そういえば、「モーツァルトは女だった」「義経は女だった」とかいう話、なかったっけ。。。

と、思いながら読みはじめたのですが、いや面白かった。 
うまく辻褄を合わせるものですな。 さすが直木賞作家(関係ないか)
最後までぼろを出すことなく押し通す力技に、感動しました。
素晴らしく説得力のあるホラ話。 ホラを吹くならここまでやらないと駄目なのですね。 参考になるなあ(何の?)

主人公・御長(おちょう)は、父・織田信秀に男として育てられ、信長を名乗らされます。
いち早く鉄砲隊を組織したのも、三間半の長槍を採用したのも、女性ならではの柔軟な発想。
愛する光秀の前では、男・信長を演じつつ、こっそり侍女・御長として逢瀬を重ねるところは、
おまえはサファイア王女かー! と、つっこんでしまいました。
しかし普通は気づくだろ、光秀・・・。

そして本能寺の変。 あ、これは愛なのですね。
愛の本能寺か。 愛の炎が本能寺を燃やしたのか〜。
すると、森蘭丸はじめ近習は単なる巻き添えですか。 気の毒なことじゃ。

愛といえば、エピローグで徳川家康が、
「愛しておられたのですな、御長様を」(492ページ)
と言う箇所はこの本最大の笑いどころ。
タヌキ親父がどういう顔で「愛」などと言ったのか、想像したらもう・・・(え、ここ笑うところじゃないんですか!?)

ただ、信長の怒りっぽい性格を女性のヒステリーのせいにしたり、
秀吉が「女は絶対に許しません」(436ページ)というくだりなど、女性が読むと気を悪くしそうな箇所もちらほら・・・。
浅井長政の鬼畜プレイもイエローカードかも。

それでも、歴史エンタテインメントとして、非常に楽しめる一冊でした。

(06.10.19.) 

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