レーガー/四つの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 作品42
(ウルフ・ワーリン独奏)



Tower : Reger/Sonatas for Violin Solo Op.42

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今年2023年はセルゲイ・ラフマニノフ(1873〜1943)の生誕150年ということで、クラシック音楽界は盛り上がっています。
記念コンサートがたくさん開かれ、ピアニストは猫も杓子も(←言い方)ラフマニノフを弾きまくっておられるそうです。
聞くところによると一晩でピアノ協奏曲を全曲演奏するという良い意味で気違いじみた偉業を達成したピアニストもおられるとか。

いっぽう、同じ生誕150年なのに全然全く少しも盛り上がっていないのが

 マックス・レーガー(1873〜1916)

です。

まあ親しみやすい曲がほとんどないので仕方ないのですが、少々不憫。
じつはレーガーは無伴奏弦楽器のための作品をいろいろ書いていて、これらは意外とイケるのです。

 4つの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 作品42
 7つの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 作品91
 無伴奏ヴァイオリンのための8つの前奏曲とフーガとシャコンヌ 作品117
 無伴奏ヴァイオリンのための6つの前奏曲とフーガ 作品131a
 2つのヴァイオリンのための3つのカノンとフーガ 作品131b
 3つの無伴奏チェロ組曲 作品131c
 3つの無伴奏ヴィオラ組曲 作品131d

たくさんあるでしょ。


4つの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 作品42(1899)は無伴奏作品群の最初を飾るもので、
比較的シンプルで演奏時間も短めなので、一番とっつきやすいと思われます。

 ソナタ第1番より第3楽章 (力強い舞曲風。中間部は重音のコラール)
 

バッハみたいですね。
レーガーはバッハを敬愛していたので、この作品はもろにバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタへのオマージュです。
バッハそっくりというか、ほとんどバッハやんか! と言いたくなります。

 「それならバッハを弾いとけば(聴いとけば)いいかぁ・・・」

と思ってしまうのが、あまり演奏されず聴かれない理由でしょうか?
まあ20世紀になろうかって時期にバロック音楽の模倣みたいな曲を書かれてもねえ。

 ソナタ第1番より第4楽章 (ヴァイオリン1本による見事なフーガ!)
 

そこへいくとウジェーヌ・イザイ(1858〜1931)の無伴奏ヴァイオリン・ソナタ(1924)は、
バッハの無伴奏ソナタに触発されながらも独自の幻想的で20世紀的な音楽世界を構築している点で一枚上手。
名作として盛んに演奏されているのも当然ですね。
しかしバッハに毛が生えたようなレーガーですが(←言い方)、捨てがたい魅力があると思うんですよねー。

ソナタ第2番の第1楽章なんて、クライスラーっぽい洒落っ気すら感じさせるチャーミングな楽章です。

 ソナタ第2番より第1楽章 
 

ソナタ第3番の第1楽章は、物語性を感じさせる緊張感あふれるプレリュードであり、
イザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ「バラード」にも負けない・・・いやちょっとは負けてるか、でもとても美しい音楽だと思います。

 ソナタ第3番より第1楽章 
 

最後を飾るソナタ第4番の第3楽章はバッハの向こうを張って「シャコンヌ」。
というかこれはバッハのシャコンヌの模倣です、まねっこです、剽窃で・・・・・・いや、すみません、オマージュと言わなきゃですね。
ここまでそっくりだと、プロのヴァイオリニストがあまり弾きたがらないのもわかる気もしますが、たいへん力の入った立派なシャコンヌです。
なおバッハより地味なわりに複雑で聴きづらいです・・・(ダメじゃん)。

 ソナタ第4番より第3楽章 シャコンヌ (バッハに似てるなあ)
 

難しいこと言わずに、BGM的にボーッと聴き流しても大変快適です。
せっかくメモリアルイヤーなんだから、マックス・レーガーちょっとは聴いてあげましょうよ。

(2023.11.05.)


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