ガリーナ・ウストヴォリスカヤ/SUITES & POEMS
(エフゲニー・ムラヴィンスキー、アルヴィド・ヤンソンス指揮 レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団)
(1954〜62録音 1曲のみ2016録音)




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社会主義リアリズムのウストヴォリスカヤ!?


ガリーナ・ウストヴォリスカヤ(1919〜2006)といえば、「怒れる鋼鉄女」のイメージ。
たとえばこんな曲

 ピアノ・ソナタ第6番(1988) (後期の傑作です)
 

カッコイイわ〜、たまらんわ〜、好きだわ〜(←変?)
しかしまあこんなわけわからん音楽書いてたら当時のソ連政府からは良く思われないわけです。

 「ソ連邦の音楽は社会主義を賞賛し、革命国家の勝利を描き、人民の革命精神を鼓舞しなければならない!」

のです。 
社会主義リアリズムってやつですね。

というわけでウストヴォリスカヤも食べていくため、「社会主義リアリズム」に従った曲も書いてました。
ふだんのガリーナちゃんと違いすぎて思わず笑ってしまいますが、これはこれでなかなか興味深い。

 組曲「若き開拓者」第1曲「トランペット・コール!」(1953) (明るいファンファーレ、笑えるくらい健康的)
 

 組曲「若き開拓者」第3曲「余暇」(1953) (平穏でロマンティックで麗しい!)
 

いやー、びっくりです。
こんな曲も書けたんですね。
メロディは綺麗でわかりやすく、オーケストレーションは手堅く、社会主義リアリズムのお手本のような音楽です。
ご本人に聴かせたら「黒歴史じゃ〜」と叫ばれてCDカチ割られそうですが。

 組曲「子どもたち」第3曲「バレリーナ人形」(1955) (優美で洒落てて、カバレフスキーかルロイ・アンダーソンかって感じ)
 

 組曲「スポーツ」第2曲「活発に」(1959) 
 

ご本人はどう思っていたのかわかりませんが、一定水準以上の聴き映えのする作品に仕上がっていると思います。
やはりただものではありません。
このCDは1950〜60年代にソ連のメロディア・レーベルに録音された音源をCDに復刻した2枚組。
指揮はエフゲニー・ムラヴィンスキーアルヴィド・ヤンソンス(マリスのお父さん)、演奏はレニングラード・フィルハーモニー。
超一流やないですか、けっこう評価されてたんですね、ウストヴォリスカヤ。

1枚目は肩の凝らない「組曲集」で、2枚目には管弦楽のための「詩曲(ポエム)」が3曲おさめられています(交響詩ってことかな?)
もちろんすべてソビエト当局からの依頼で書かれたもの。
ところが、詩曲第1番「草原の光」(1959)と、第2番「英雄の業績」がわりと評判が良かったもので、
調子に乗ったウストヴォリスカヤ、詩曲第3番「平和の詩」で、うっかり「素」を出してしまいした・・・。
 
 詩曲第3番「平和の詩」(1961)
 

管弦楽と少年合唱のための作品。
歌詞(セルゲイ・ダヴィドフによる)は、「平和のために闘争せよ! 平和はより強くあれ!」という内容で、
ウストヴォリスカヤは率直に「平和への闘争」を描いたつもりだったらしいのです。

初演は1962年4月にレニングラードにてロジェストヴェンスキー指揮、レニングラード管弦楽団で行われ、
政府高官や外国からの賓客も多数列席、サミュエル・バーバーをはじめとするアメリカ作曲家協会の代表団も含まれていました。

小太鼓の連打、切り裂くような金管、ピアノが無調で協奏風に扱われ、さらに少年合唱が単音でレチタティーヴォ風に歌います。
アヴァンギャルドです、超攻めています、「社会主義リアリズム」を完全に逸脱しています。
演奏後、バーバーは 「これが平和というのなら戦争のほうがましだ」 と言ったと伝えられています。

この曲は二度と演奏されることはなく、新聞や雑誌の記事にもならず、録音もされませんでした(このCDは2016年の録音)。
以後、当局がウストヴォリスカヤに曲を依頼することはありませんでした・・・。
まあ、強制収容所送りにならなかっただけ幸運だったのかも。

大変興味深い曲です。
推定全国50人ほどのウストヴォリスカヤ・ファンは必聴であります。

(2025.12.30.)


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