ガリーナ・ウストヴォリスカヤの音楽
Amazon.co.jp : Shostakovich: Piano Quintet; Ustvolskaya: Octet; Composition
No. 3; Symphony No. 5
ショスタコーヴィチを振った女
ガリーナ・ウストヴォリスカヤ (ウストヴォルスカヤ) Galina Ustovolskaya は、1919年ペトログラードに生まれた作曲家です。(2006年没)
1937年にレニングラード音楽院のショスタコーヴィチの作曲クラスに入り、1947年、優等賞を得て卒業しました。
ところがその直後(1948年)、ショスタコーヴィチは、「ジダーノフ批判」を受けて教職を追われます。
愛弟子であったウストヴォルスカヤの立場も良かろうはずはなく、彼女の作品はほとんど発表の場を失ってしまいました。
しかし彼女は非常に優れた音楽家であったようです。
ショスタコーヴィチから彼女にあてた手紙には、
「君が私に影響されているのではない。むしろ私が君に影響されている。」
と書かれているそうですし、ショスタコーヴィッチの弦楽四重奏曲第5番作品92には、
ウストヴォルスカヤの『三重奏曲』の第3楽章の主題が引用されています。
それどころか、ショスタコーヴィチは、最初の妻ニーナが1954年に病死すると、ガリーナにプロポーズしたそうです(彼女は断わりました!)。
彼女は生涯独身を通し、今もサンクト・ペテルブルクでひっそりと暮らしているそうです。(2006年12月死去)
しかしここ数年、ウストヴォルスカヤの作品が次第に録音されるようになり、徐々に彼女のファンが増えています(私もそのひとり)。
彼女の音楽は、ショスタコーヴィチの弟子だけあって調性を感じさせる部分もありますが、基本的には無調で不協和ないわゆるゲンダイオンガク。
大編成の曲は少なく、室内楽編成のものとピアノ独奏曲がほとんどです。
抑圧、怒り、苛立ちといったネガティヴな要素を感じさせる重苦しい曲が多いですが、
どこか虚無的なショスタコーヴィチとちょっと違うのは、それらをバネにして立ち上がり、前進しようとする強い意志が感じられることです。
そのエネルギーが聴く者をひきつけるのでしょう。
はじめて彼女の作品(1950年作曲の「八重奏曲」だったかな)を聴いたとき、本当に驚きました。
現代音楽を聴いて元気が出たのは初めてだったからです。
八重奏曲 より
ディスクとしては、MEGADISCというレーベルから、彼女の作品が体系的にリリースされています。
べスト盤(?)、"An Introduction to Galina Ustovolskaya" (MDC7858) には、
「三重奏曲」「コンポジション第2番『怒りの日』」「交響曲第4番『祈る人』」「ピアノ・ソナタ第5番」という
各ジャンルの代表作がおさめられていておすすめです。
コンポジション第2番「怒りの日」
なお、ウストヴォリスカヤの交響曲第4番は、演奏者4人、演奏時間も数分の単一楽章の曲で、
「どこが交響曲やねん」と、思わず突っ込みたくなります。
私が好きな曲は、「八重奏曲」、「三重奏曲」、「チェロとピアノのためのグランド・デュオ」
「ピアノのための12の前奏曲」、といったところかな。
ピアノのための12の前奏曲より(抜粋)
初期の作品である「ピアノ協奏曲」も、エネルギッシュな力作です。
(01.12.21.記)
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