スカルラッティ/ソナタ集(Box Set)
(クリスティアン・ツァハリアス)






ミョーちきりんなCDがお好きな方必聴!


みなさまこんにちは。
珍盤・迷盤と言われるCD、クラシックの分野に限っても数多ございます。
たとえばオペラ・ファンで音痴の富豪夫人がカーネギー・ホールを借り切って好きに歌いまくった「人間の声の栄光????」 とか、
シュトックハウゼンの「ヘリコプター四重奏曲」(演奏者は別々のヘリコプターに搭乗し、空を飛びながら演奏する)のCDとか、
ジョン・ケージ「4分33秒」を真面目に収録したCDとか。


さて本日ご紹介するのは、クラシック珍盤史上に控えめながらも燦然と輝く、クリスティアン・ツァハリアススカルラッティです。

ツァハリアスといえば曲者系ピアニストとして知る人ぞ知る存在。
ずっと以前にモーツァルトのアルバムをご紹介したことがあります。
また、指揮者としてもミヒャエル・ハイドンの「レクイエム」を録音するなど、なるほどこりゃあ曲者だ。

さて今回再発されたスカルラッティの4枚組ボックス・セット。
最初の3枚はまあ普通です。
スカルラッティのソナタをいろいろ、両手を使ってピアノで弾いてます。
 
4枚目が素敵な珍盤、1973年から94年にかけて彼が世界各地で弾いた「ソナタ K.55」が、年代順に20曲というか20回おさめられているのです。
よくもまあこんなCD、作ろうと思ったもんだ。
そして、よくぞ発売してくれたもんだ。
当時のEMIの遊び心というか度量の大きさは山よりも高く海よりも深かったんですねえ。

おそらくはアンコールでこの曲を必ず弾くことにしていたのではないかと思われます。

 スカルラッティ:ソナタ K.55(このCDの演奏ではありません)
 

当り前ですが一つとして同じ演奏はなく、録音条件もびっくりするくらい異なります。
なので思ったほどは退屈せずに聴けます。
そして聴き終えた自分を褒めてあげたくなります。

 1.バーデン=バーデン(1973):快速で軽やか、音の粒が飛び跳ねているような心地良い演奏です。スタジオ録音。

 2.Juvisy sur Orge(1973):トラック1と同様の急速軽快演奏。えらく録音がデッドだなーと思っているうちに終わっちゃう。

 3.Le Caire(1978):ややしっとり感のある演奏。でも音が割れてます。どんな機械で録音したんだろ、ラジカセとか(まさか)。

 4.シュトゥットガルト(1984):残響豊かな録音のせいか、ロマンティックで陰影に富んだ演奏です。

 5.パリ(1984):ところどころ左手を強調するのが面白いアクセントになっている演奏。しかし同じ曲が続くねえ。

 6.フライブルク(1985):オンマイクで残響の少ない録音、音楽はサラサラと流れるよう。スタジオ録音。

 7.アムステルダム(1985):珠を転がすような美音が印象に残る演奏。楽器は何なんだろう。

 8.東京(1986):落ち着いた感じの演奏。というかややテンション低いです。時差ぼけか?あと音も遠い感じ(サントリーホールなんですが)

 9.シュヴェツィンゲン(1989):残響豊かな暖かい音。音の良いホールなんでしょうねきっと。拍手入り。

 10.パリ(1989):スタッカート主体のツブツブした演奏。強弱のコントラストも鮮やか。グールドが弾いたらこんな感じ? やっと半分、ふう。

 11.ハーレム(1990):適度な残響のホールトーンが美しい。演奏は中庸。

 12.シュトゥットガルト(1990):これは速い! 風のように駆け抜けていく演奏。

 13.ミュンヘン(1992):同じような快速演奏、録音はこもり気味。さすがにちょっと飽きてきた。

 14.リーヘン(1993):あー、また同じ曲だ。ややゆっくり目で落ち着いた解釈。

 15.ルードヴィヒズブルク(1993):速い演奏。ノリノリで弾いている感じがします。録音はデッド気味。

 16.チューリッヒ(1993):さらに軽やかに駆け抜けてゆきます。あと4つだがんばれ。

 17.ハノーヴァー(1993):またこの曲かよー! はい、上手いです、たいへんじょうずにできました!!(←ちょっと壊れてきた)

 18.ルクセンブルク(1994):ツァハリアス楽しそう、鼻歌まじりみたいな感じで軽妙に弾いてます。

 19.ローザンヌ(1994):さらに軽々としたタッチのノリノリ演奏。 あ、あとひとつだ・・・。

 20.リンツ(1994):妖精が戯れているようなファンタジックな演奏。いい演奏ですが、それ以上にこれが最後なのが嬉しい。


・・・・・・お。終わった・・・・・・。

いやー、もう当分この曲聴きたくない。
というか一生分聴いたな、この曲は。
無駄な達成感をかみしめることができます。


あとの3枚についても簡単に。

1枚目(1979〜81録音)と2枚目(1981〜84録音)は、「気鋭のピアニストによってセンス良く弾かれたスカルラッティの見本」という感じ。
才気あふれる颯爽とした弾きっぷりが小気味良いです。

 ソナタ ヘ短調 K.467
 

3枚目(1994録音)は一味違って、意図的にテンポを揺らし、大胆な強弱をつけた、かなり「濃い」演奏。
大きな幅で表現された個性的なスカルラッティ、聴きものです。

個人的にはホロヴィッツより面白く聴きました。

 ソナタ ニ長調 K.492
 

大変お得な値段になっておりますが、限定版なのでお早めに。

(11.10.31.)


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