モーツァルト/ピアノ協奏曲第20&21番
(EMI 1989録音)
(クリスティアン・ツァハリアス独奏 ジンマン指揮 バイエルン放送交響楽団)
Amazon.co.jp : Mozart: Piano Concertos Nos. 20 & 21
HMV : Mozart / Piano Concertos No.20&21
ガラッ八:親分こんちは〜。 元気してますか〜。
親分:おう、ガラッ八、早えな。 町内見回り、もう済んだのかい。
八:え、見回り? あらー、わすれてやした。
親:まったくおめえは能天気な極楽トンボだぜ。
八:きょほほほほほほ。
親:映画「アマデウス」のモーツァルトみたいな声で笑うんじゃねえ。
八:あ、親分、モーツァルトといえば、こんなCD買ってみやした。
クリスティアン・ツァハリアスとかいう妙な名前のピアニストの、「ピアノ協奏曲第20&21番」。 Amazon でたったの895円。
名前がヘンだから売れないんでしょうかね〜。
親:な、なにい〜、あの隠れ名盤が895円!!
八:え、これって名盤なんで?
親:「名盤」と呼ぶ人もあれば「トンデモ盤」と切り捨てる人もいる問題作だ。
ツァハリアスは1950年生まれ、ドイツでカリスマ的な人気を誇るピアニストだが、日本では残念ながらキワモノ扱いだな。
八:そんなにヘンテコリンなんで?
親:まあ聴いてみようぜ。 第20番の第1楽章、とても疾走感のある演奏だと思わねえか。
八:速めのテンポでサクサク進んでいきやすね。 気の短いあっし向きって感じですね。
親:ただ速いだけじゃなく、音楽性も抜群、ピアノの粒立ちのよさは極上だ。
「音のツブツブ」が降り注いでくる感じは、グレン・グールドを思わせるが、こっちのほうが愛想がいいかな。
なおカデンツァはツァハリアスの自作。
八:このピアニスト、作曲もするんですね。
親:うむ、そして第2楽章ロマンツェでは、自由に装飾音を入れまくる。 勝手に音を増やしてるんだ。
八:えっ、楽譜どおりに弾かなくてもいいんで? クラシックなのに。
親:モーツァルト自身、コンサートで弾くときは、けっこうアドリブを効かせていたはずで、そういう気分で弾いてるんだろね。
ただ、「モーツァルトが書いた楽譜を勝手に変更するとは、何様じゃい!」という声も多かったりするわけだな〜。
八:それでキワモノですか。 とても綺麗で見事な演奏だと思いますがねえ。
親:第3楽章はもっとすごいぞ。 カデンツァの直前に・・・
八:突然、こもったようなオーケストラの和音が響きますね。 なんですかこりゃ(下の動画の5分01秒あたりから)。
親:オペラ「ドン・ジョヴァンニ」の冒頭の和音をSPレコードで流しているらしい。
この曲のデモーニッシュな雰囲気が「ドン・ジョヴァンニ」に通じるという主張なんだろうな。
八:これはちょっとやりすぎかも・・・。
親:並のピアニストがこんなことをすれば、「アホかっ!」と叱られるところだが、
テクニックも音楽性も超一流のツァハリアスがやると、意外に説得力あるよな。 なにより、面白いじゃねえか。
カップリングの21番でも、20番ほどじゃないが、いろいろ細かい遊びを見せて・・・というか聴かせてくれる。
八:あっしは気に入りましたね、このピアニスト、確かに面白えや。
親:もっと聴きたいなら、8枚組の全集 もあるよ。 これはお買い得。
第26番「戴冠式」のカデンツァで、オルゴールと競演するなど、やりたい放題だが、演奏の水準はピカイチだ。
モーツァルトのピアノ・ソナタ全集もある。 有名な「トルコ行進曲」は、なんとシンバルの伴奏つきだ。
八:シンパル? なんで?
親:当時のトルコの軍楽隊の雰囲気を出すためだそうだ。
そして、ツァハリアス最高の珍盤は文句なくこれだな。
ENCORE (EMI 7243 5 55402 2 5)
残念ながら現在在庫切れ!!
八:「アンコール」・・・でやんすか?
親:ツァハリアスはリサイタルのアンコールでスカルラッティのソナタK.55を必ず弾くことにしているようだな。
このCDは、彼が各地で弾いたK.55をなんと20回も収録したライヴ・アルバムなんだ。
録音時期は1973年から1994年に渡っている。 ちなみに東京もあるよ(1986年)。
一人のピアニストによる同じ曲を20回!
それでも聴いているうちに、毎回毎回の解釈やテンポの違いが面白くなってくるから恐ろしい。
通して聴くと、夢でこの曲が聴こえてきてうなされるというトンデモ盤だ。
八:はあぁ・・・なんつうか、ちょっとついていけない気もしてきた。
親:最近は指揮にも進出しているツァハリアス、たいしたひょうきん者・・・ではなくて、超個性派音楽家だ。
覚えておいて損はねえぜ。
(05.9.6.)