ショパン/24の前奏曲(オルガン版)
(グンター・ロスト:オルガン)




Amazon.co.jp : ショパン:24の前奏曲 Op.28(オルガン編)

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Tower@jp : Chopin: 24 Preludes Op.28 (Organ Version)


広大なクラシック音楽世界の片隅にひっそりと存在する隠れ里のような小さなジャンル。

 編曲もの

わざわざ原曲と違う編成で演奏するという、作曲者の意図を故意に踏みにじるこのジャンル。
まっとうな音楽ファンからは一段低いもののように扱われ、なにかと肩身が狭いです。
例外は、ムソルグスキー/ラヴェルの「展覧会の絵」くらいでしょう。

しかしじつは私、「編曲もの」大好きでして。
いままでにも、

 ゴルトベルク変奏曲の弦楽合奏版とかハープ版とか、

 ヴィヴァルディ「四季」のピアノ版とか

 「フーガの技法」の弦楽四重奏版とか

 ショパンの「バラード第1番」をヴァイオリンとピアノで弾いたものとか

 ブラームスの交響曲をピアノ連弾で弾いたものとか(これは作曲者自身の編曲)

けっこういろいろ取り上げております。

編曲版のほうがむしろ曲想にマッチしている場合があったり(アルベニスやグラナドスのギター版など)
原曲とは違った魅力に気づかされるなど、興味はつきません。
ときには「なんじゃあこりゃあ!」と言いたくなるゲテモノに出くわすのもまた一興。

さて先日見つけたのが、この「ショパン/24の前奏曲」オルガン版
ピアノの詩人の代表作中の代表作、ショパン芸術のショーケース、ピアニズムの極致であるこの大傑作を
こともあろうにパイプオルガンで演奏しちゃおうという代物です!

 まさに音楽の神をも恐れぬ所業!
 こういうの大好きです!
 大喜びで聴いてみました。
 

  ・・・・・・・・・・・・


・・・正直、アップテンポの曲はキビシイです。
音響がモコモコ・ワンワンした塊となって、ところかまわずのたうち回ってる感じ。

 「頑張ってることは伝わるけど、なんか空回りしてない?」
 
どうしても鈍重で厚ぼったい響きが気になってしまう繊細な私。
まあ、我が家の再生装置が高級品でないことも関係してるんでしょーが。
それでも「第16番」などは健闘してると思います。

 第16番
 

いっぽう、スローテンポの曲は、なかなか良い雰囲気。
瞑想的で、神秘的な響きを帯びます。
太田胃散で有名な「第7番」は、なんだか笙のようなミヤビでやんごとない世界、なんじゃこりゃ。

 第7番
 

度肝を抜かれたのが「第15番・雨だれ」
天使のコラールのように神々しく始まったかと思うと、中間部では重低音がブンブン迫り、モンスターの足音のよう。
しかもテンポは超遅く、9分近くかけて迫力たっぷり。
なんだかホラーな曲になっております、こ、怖いよう・・・・・・。
作曲者の意図とはちょっと(かなり)異なるのでしょうが、地の底で亡者がはいずるような「雨だれ」、大変刺激的です。

 第15番「雨だれ」
 

オルガンという楽器の性質上、宗教的フレイバーただよう、宇宙的広がりを感じさせる「前奏曲集」となっております。
そもそもこの作品に「宇宙的スケールの大きさ」が必要なのかはちょっとアレですが・・・。

ちなみに、この曲集には、フランスの作曲家ジャン・フランセによる管弦楽版 もあります。
多彩なオーケストレーションが楽しい、華やかな編曲ですが、残念ながらCDは現在入手困難の模様。

(2012.6.16.)


ショパン:24の前奏曲(ジャン・フランセによる管弦楽版)より



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