アヴァラヤ・キソフスキー/ピアノ協奏曲
April Barker(ピアノ・指揮) Tellalie Orchestra



Anazon.co.jp : Kisovsky Piano Concerto


注)これは2007年のエイプリル・フール記事です

20世紀のピアノ協奏曲中最低の問題作といわれる、Avaraya Kisovsky「ピアノ協奏曲」が、
あろうことかついに録音されてしまいました。
暴挙を成し遂げた独奏者はApril Barkerという無名の女流奏者、なんと弾き振りであります。
まさしく無謀としか言いようがございません。

第1楽章
木管の暗いコラールが、徐々に管弦楽に広がってゆきます。
ティンパニのトレモロによる長いクレッシェンドの頂点で、
ピアノが両手ユニゾンのグリッサンドで荒っぽく飛び込んできます。
ピアノの打楽器的使用法を究極まで突き詰めたともいわれるこの楽章、
クライマックスでは、両手だけでなく、頭を鍵盤に何度もぶちつける和音連打が要求されます。
独奏者の顔面と鍵盤が真っ赤に染まる流血の惨事に、観客いや聴衆も大興奮、気の弱い人は失神。
クセナキスの「シナファイ」も真っ青の体育会系楽章であります。

第2楽章
曲調は一転、柔和で穏やかな弦のメロディ。オンド・マルトノのほわほわした音が夢幻の境地に誘います。
傷を手当する余裕を与えるため、この楽章の独奏ピアノは、ときどき思い出したように分散和音で合いの手を入れるのみ。
前楽章のダメージもあり、ピアニストは次第にこっくりこっくり・・・。
なんと、協奏曲でソリストが「寝落ち」という超珍しい事態が発生することもあるのですが、
聴衆もほとんど眠ってしまうので気付かないんだとか。
このディスクでは破綻なく演奏されているようで、Barker女史、なんとか眠らずに乗り切ったのでしょう。

第3楽章
ラフマニノフを思わせるロマン派的で華やかなトッカータ風フィナーレ。
途中から木管とホルンに現れる舞曲風メロディをもとに、大規模なフーガが始まります。
その頂点で突然、舞台袖からバリトン歌手が現れ、
「おお、友よ、このような音楽ではなく、もっと喜ばしい歌を歌おう」と歌い上げます。
怒ったピアニストがバリトンに襲いかかった瞬間、ゴングが鳴ります。
「悲愴のドラ」「新世界よりのシンバル」かこのゴングかと言われる、渾身のひと叩きで戦闘開始。
オーケストラは「闘牛士の歌」「モンターギュ家とキャピュレト家」「剣の舞」で戦いを盛り上げ、
聴衆も自由に声援を送るよう指示されます。
最後は、ピアニストが勝った場合は、ピアノの華麗なカデンツァで、バリトンが勝った場合は、勝利のアリアで終わります。
いわゆる「偶然性」が導入されているのです。 ビバ、現代音楽!
このディスクには、両方のヴァージョンが収録されています。 両者痛み分けというところか。

まったく恐ろしい曲が録音されてしまったものです。
なおこのCD、非常にレアなため、いささか高価です。
聞いたところによると、800USO・ドル程度で取引されているそうです。
USAドルではありません、念のため。

(07.4.1.)


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