万城目学/鹿男あをによし
(幻冬舎 2007)




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サワヤカ和風伝奇ファンタジー


人間は、二種類に分けることが出来ます。
生き物にエサを与えるのが好きな人間と、そうでない人間です。
私は基本的に前者でありまして、
お堀の鯉に食べ残したパンをあげようとして落っこちそうになったり、
動物園で「ウサギのエサ」を買って与えて手をかまれそうになったりします。
子供が小さいころはよく、手ずからエサ、もとい食事を与えて吐かれました(おいおい)

だから、かつて修学旅行で奈良公園に行ったときも、当然鹿たちに「鹿せんべい」を配布したはずですが、
残念ながらほとんど憶えていません・・・・歳ですな。

さて主人公の大学院生、ひょんなことから遠く離れた奈良の女子高の臨時教諭を引き受けます。
この主人公、漱石「坊っちゃん」風に名無し、マドンナは出てくるし、赤シャツに相当する教頭もいます。
ある日、主人公は奈良公園の鹿に、渋い中年男の声で話しかけられます(!)。

「鹿せんべい、そんなにうまいか」 (つい味見してしまったのです)

さらに鹿が言うことには、この国を破滅から救うため、ある使命を果たしてもらいたいと。
それは京都に行き、そこで渡される神宝を奈良に持って帰ってくること(・・・・それだけかい!)

スケールが大きいのか小さいのかわからない、人を食った、ゆる〜いノリ。
が、一見簡単そうな使命ほど果たせないのがこの手の小説のお約束。
結局、何者かに神宝を横取りされてしまいます。
鹿に渋い中年男の声で凄まれたうえ、「鹿男」にされてしまった主人公、神宝を必死で探す羽目に。

主人公と、どうもうまが合わない女生徒堀田イト(山嵐だよ・・・)
なぜか主人公が顧問をつとめる剣道部の試合で大活躍。
試合に勝てば、神宝が取り戻せると(ホンマかいな)、主人公はハラハラドキドキ。
ここがこの小説のクライマックスですね。 
剣道は全然わかりませんが、手に汗握る迫力の描写で読ませます。
しかし、まだ半分をちょっとすぎたところだぞ? おかしいなあ?
と思っていたら、腰も砕ける急展開、さらなる大騒ぎで最後まで大変楽しく読めました。

勢いのある一気読みエンタテインメントですが、同時に細部まできっちり辻褄合わせてあるのはさすが。
終わり方まで「坊っちゃん」に重ね合わせてます。
前作「鴨川ホルモー」よりも完成度高いと思いました。

と、ここまで書いておいてなんですが・・・やっぱり正直に言っておきます。

  私、いまだに「坊っちゃん」を読んでおりません

あのころから、「読まなきゃいけないなあ・・・」と、思ってはいるのですが。
ではなんで内容知ってるのかって?
子供が学校で借りてきた「まんが・日本文学全集」で読んだのであります。

(07.5.12.)


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